首都圏の私立中受験率が
過去2番目の高水準に

 一つとして、不十分だった学校の対応を学習塾やオンライン講座などで補った家庭がかなりあった。20年7月下旬に実施された小学校高学年~中学生の保護者向けのアンケート調査(POPER実施)によると、学習塾の85%は同年4月までにオンライン授業を導入していた。緊急事態宣言発令下における対応の満足度を保護者に尋ねた質問では、「学校の方が良い」と答えた人が12.0%だったのに対して、「学習塾の方が良い」という回答は88.0%に上った。

 学校と塾では機能、役割が違い、対象としている子供たちの家庭環境なども異なるので、一概に比べることはフェアではない。とはいえ、休校中に多くの公立学校が主体的に動けなかったのに対して、学習塾の多くは対照的だった。

 もう一つは、中学校や高校で私立に流れる動きである。大手進学塾の日能研によると、21年の1都3県の私立中学校の受験率は、20.8%で過去2番目に高い水準だった。教育関係者たちは、オンライン授業などで素早く緊急時の対応を取ることができた学校の人気が高まっていると分析している。

 伝統的に公立が強いといわれてきた愛知県でも、20年度中学校卒業見込みの生徒の希望(20年9月時点)として、私立高校が13.1%増となったのに対して、県立高校は6.8%減となった(対象は県内の全日制高校)。

 もちろん高校進学にはさまざまな要素が絡んでおり、私立高校でも国の支援により授業料が実質無償化(所得制限あり)された影響も大きいだろう。コロナ禍での公立学校のパフォーマンスの悪さが直接に影響していると断定はできない。とはいえ、このままでは私立人気は年々強まっていく可能性を否定できない。

「炭鉱のカナリア」という言葉がある。昔、欧米の炭鉱作業員はカナリアを入れた籠を先頭にして炭鉱を進んだ。もし炭鉱内に人間が感知できない有毒ガスがまん延している場合、カナリアの歌声は止まり、そのことで危険を察知できるからだ。私立志向が強まるのは「このままでは公立学校は見限られるぞ」「公立離れが起きるぞ」という炭鉱のカナリアであろう。

 筆者が20年5月に保護者向けに実施したアンケートは、いささかショッキングな結果になった。