「休校中の学校からのコミュニケーションや働き掛けが少なく(または満足できるものではなく)、信頼感が下がったかどうか」を聞いたところ、公立小の保護者の50%、公立中の保護者の約56%が「信頼感が下がった」と回答。対して、国立・私立の小・中で「信頼感が下がった」と回答したのは23%。公立と国立・私立でかなり差が出たのである。

 学校ごとの対応の差が、保護者の不信という結果に表れた格好だ。

 保護者も生徒も社会も、休校中の学校にそう多くのことを期待したわけではなかっただろう。小学生の親であれば、せめてもっと教師から宿題の趣旨や意味を説明してほしかったり、小中学生や高校生であれば、ほかの生徒とオンライン上などでちょっとでも交流したかったりということだろう。なにもすごく質の高い授業動画をたくさん配信してほしいといった願いではなかっただろう。

 一部の公立学校は、オンライン朝の会などを開いて、生徒を励ましたり、子供たちの声に耳を傾けたりしたが、そうできた学校はごく少数だった。一向に変わらない、変わろうとしない学校に保護者たちは失望し、信頼が低下した。

タブレットやノートPC
箱さえ開けていない学校も

 1年前と違って、いまではほとんどの公立小中学校で1人1台の端末(タブレット、ノートPC)が整備されている。だが、1年前と変わらないのは、活用できていない学校もまだまだ多いことだ。設定などに手間がかかることは理解できるが、この4月になっても箱さえ開けていない学校もあった。保護者、生徒との連絡・コミュケーション方法も、多くの公立学校は、いまだに紙のプリントと一斉配信メールくらいで、双方向性は低いままだ。

 こうした中、保護者と学校との亀裂はますます拡大している。ただ、保護者が憤りを現場の教師たちにぶつけるだけでは、少々酷だし、事は解決しない。教師たちはひたすらに忙しいからだ。

 教師の多忙はコロナ前からも深刻な問題だった。近年の学習指導要領の改訂で教える内容は増え続け、授業とその準備にも時間がかかる。ICT(情報通信技術)の導入が遅くて採点や事務作業の効率化が進んでいない学校も多い。同時に、部活動をはじめ、授業以外の負担も重い。

 コロナ禍による休校から再開した後は授業時間を増やした学校もあったし、先生たちの業務に消毒、清掃、検温チェックなどが加わった学校も多くある。

 筆者が20年6月に教職員向けに実施したアンケートによると、「授業の準備をする時間が足りない」「仕事に追われて生活のゆとりがない」という回答が小中学校の先生で約8割、高校で7割前後に上った。

 教職員の仕事は「スクラップ&ビルド」でなく、「ビルド&ビルド」でコロナ前から今日まできているのだ。