夢を3つの切り口で考える

夢を考える時は3つの切り口で考えてみよ。

①どんな人でありたいか……Being
②手に入れたいものは何か……Having
③社会に(どんな人たちに)どのような影響を与えたいか……Giving

「やりたいことをやろうぜ!」と、声高に叫ぶ風潮がある。しかし、間違っても、

「全員が業務内容レベルでの『どうしてもやりたいこと』を見つけなければならない」

などと勘違いしないでほしい。

そういう誤解をして、「やりたいことがわからない」と悩み苦しんでいる学生が多いので、ここではっきり言っておきたい。

「どうしてもやりたいことなど、今の段階で見つからなくても当然だ。やりたいこと探しに縛られるな。まずはきみの夢を持とう」

もちろん中には、やりたいことの中身に強烈にこだわるタイプの人もいる。

スポーツ選手もアーティストも作家も、映画監督やドラマのプロデューサーもドラマのディレクターも雑誌や書籍の編集者も、ジャーナリストも、フリーランスだろうと会社に所属していようと、プロと言われる人はほとんど「何をやるのか」にもこだわっている。その中身自体が夢という人だ。それをやりたくてやりたくてしょうがない、「誰に何と言われようと、それをやってないとイヤだ」という人だ。マスコミの人も、クリエイティブな要素が強ければ強いほど、たいていの場合、その内容にある程度以上こだわっている。

しかし、やりたいことの内容にそれほどこだわらない人もいる。やりたいことを見つけ出そうにも見つけられなくて当然の人も大勢いるのだ。

例えば、世界経済を前進させる実感を持ちたくて、金融に行っている人もいるし、同じような思いで自動車メーカーに行っている人もいる。商社で化学製品を扱っている人もいる。その人たちはどうしても金融なのだろうか、どうしても自動車なのだろうか、どうしても化学製品なのだろうか。

そうではないケースのほうが多いのだ。どうしてもその商品、その業界でなくても、その人の夢は実現できるが、よりベターな選択として、あるいは結果として、その業界を選んでいるはずだ。

僕がこれまで数多くの学生を見てきたところ、どうしてもやりたいことにこだわる人は、全体の1割に満たない。9割以上の人は、仕事の内容よりも、仕事の目的(影響)や名誉や会社の価値観など、「仕事を通じて実現したいこと」(まさにBeing, Having, Giving)にこだわるタイプである。

どうしてもやりたいことを持っているか持っていないか。どちらがいい悪いではない。どのレベルまで業務内容レベルでのやりたいことの中身にこだわるかは、きみ次第だ。

僕がここで言いたいのは、業務内容レベルのやりたいことにこだわるタイプであろうとなかろうと、いずれにしても「夢=仕事を通じて実現したいことを明確にしようぜ」ということだ。

「どうしてもやりたいこと探し」につまずいて悩み苦しむのではなく、やることは何であれ、「仕事を通じて実現したいことを持とう」ということだ。

ただ、このような3つの切り口さえあれば万能なのか、というと、実はそれほど甘くはない。今すぐにでも実際にやってみるとよい。

3つの切り口で、「仕事を通じて実現したいこと」を言葉にできるだろうか。そして、それらが、自分の本音だと言い切れるだろうか。なかなかそうはいかないだろう。実際、人知れぬ頑張りを経たからこそ、本音の言葉化に成功したという人が多い。

たるんだ日常を送る中から、突然本音の未来を言葉にすることは決して容易ではない。

さて、夢とは、たとえ、たかが就職活動で納得できる結果が出せなかったとしても、それでなくなってしまうものではない。その過程にどんなことがあろうと、たまたま出会った面接官に嫌われようと、譲るわけにはいかないものであるはずだ。ほかの業界から攻め上がってもいい。その業界に執着するなら転職してもいい。

その業界への転職が困難なら、違うアプローチだっていくらでもあるはずだ。