正座は痛くてつらいどころか、とても素晴らしい姿勢です。今2800万人(厚生労働省研究班調べによる推定)を悩ませている腰痛改善に効果を発揮する新しい健康法なのです。正座の効果は、腰痛だけにとどまりません。私はこの本の中でそのことを明らかにしていきます。

 私は、東京で整骨院を開院している、「柔道整復師(じゅうどうせいふくし)」です。

 祖父は漢方医、父は鍼灸師という家に生まれました。このような家庭環境に加え、生まれつき心臓病を抱えていましたので、子どもの頃から人一倍「健康」というものを身近に感じて育ってきました。この仕事を志したのも自然な流れだったと思います。

 整骨院(接骨院ともいいます)というと、巷(ちまた)にある整体院やカイロプラクティック院などと同一視されがちです。しかし、患者さんに対する施術の方法はまったく違うものです。

 整体院はどちらかというと、東洋医学や民間療法を主体とした施術を行っていることが多いようです。整体師やカイロプラクターは民間療法です。

 一方、整骨院は現代医学に基づいて、骨折、脱臼(だっきゅう)、捻挫(ねんざ)、打撲のようなケガや、腰痛、寝違え、肉離れ、ぎっくり腰、スポーツ障害などの治療を行いつつ、東洋医学的な見地からの施術も行います。「柔道整復師」は正式な国家資格であり、厚生労働大臣が認定した国家試験に合格することでしか得られない資格です。

 つまり、整骨院は、「現代医学による治療」と「東洋医学による予防的な施術」の両面からアプローチできることが特徴だといえるでしょう。

延べ30万人の患者さんへの施術で、
生み出された「朝30秒の正座」健康法

 当院は開院して20年になりますが、ここでの診察を通して、これまで延べ30万人の方を治療してきました。

 この診察と治療を積み重ねていく中で、本書でご紹介する「朝30秒の正座」(金〈キム〉式正座)健康法は開発されました。現在は、体の不調を訴えて来院されるほとんどの患者さんに、この方法をお伝えし、治療や再発予防、そして健康増進に取り組んでもらっています。

 正座は昔ながらの座り方、というイメージを持つ方が多いかと思います。しかしながら、「朝30秒の正座」健康法は、古い治療法というわけではありません。当院で本格的にはじめたのもつい5年ほど前のことですし、私自身が長年にわたる正座愛好家というわけでもありません。

 この健康法にたどり着く前は、筋肉トレーニングやゆがみを改善する方法など、腰痛にいいといわれるありとあらゆる治療法を試してきました。もちろん、当院を訪れる患者さんの痛みやつらさを少しでも緩和(かんわ)してあげたいという気持ちからの行動ですが、実は私がここまで「腰痛」にこだわるにはもうひとつの理由がありました。

 それは、私自身が深刻な腰痛に悩まされていたからです。

 その腰痛は、 21歳のときに交通事故に遭い、足を傷めたことがきっかけとなって発症しました。それまで、なんの苦労もなくできていたことができなくなり、いつまた激痛が走るんじゃないかという恐怖を抱えて暮らす毎日。それまでの生活とは一変してしまいました。

 私自身が患者ですので、「腰痛には○○がいい」という噂を聞けばすぐに試し、「○○をすれば腰痛が治る」という情報を得れば、多少金額がはっても挑戦してみることの連続でした。なかには、一時的にでも腰痛が緩和する、比較的よい治療法もありましたが、残念ながら、どれも根本的な治療には至りませんでした。それだけ、私の腰痛はとても頑固でやっかいなタイプであったといえます。そんな私の腰痛でさえ改善させたのが「朝30秒の正座」健康法です。おかげさまで、今では腰痛に悩まされることもなく、好きなゴルフを思いきり楽しめる毎日を送っております。

 このいきさつについても、本書の中でお伝えしていくつもりです。