デスクワークも運動不足も、
実は腰痛の原因ではありません
腰痛に悩む日本人は増えているといわれています。このことは私自身、日々実感していることです。腰痛を訴えて来院される方の総数が、ここ10年で確実に増えているのです。しかも、以前の患者さんは、比較的ご年配の方が多かったのですが、今は年齢を問いません。10代の若い方も珍しくないのです。
なぜでしょう。
みなさんだったら、「デスクワークが増えたから」「現代人は運動不足だから」といったお答えをされるかもしれませんね。たしかに、それは腰痛の原因を占める大きな要因ではあります。にもかかわらず、デスクワークをしていても腰痛にならない方もいますし、運動をしていても腰痛になる方もいます。ということは、デスクワークや運動そのものに問題があるわけではない。
問題なのは、どんなデスクワークのやり方をしているか、どんな運動の仕方をしているか、ということなのです。
私は腰痛に悩む人が増えた要因の中には、「正座をしなくなったから」ということも含まれると考えています。
ここ20~30年のうちに、日本人のライフスタイルは大きく変わりました。「お茶の間」から「リビングダイニング」へ。畳の部屋で、ちゃぶ台を囲む家族団欒(だんらん)の風景は、ダイニングテーブルで椅子に座って食事をし、ソファでくつろぎながらテレビを見るという姿に様変わりしました。それに伴って正座の習慣も少なくなっていったのです。昭和30~ 40年代までは、食事どきだけでも正座をするという習慣が残っていましたが、今では風前(ふうぜん)の灯(ともしび)です。
日本人は、正座という習慣を置き去りにしてきたようです。
しかも、ただ忘れてしまったのではなく、意図的に避けてきました。「正座はしびれる」「足の形が悪くなる」「ひざが痛くなる」「子どもの足が伸びない(短足になる)」といったことがまことしやかに広まり、「正座はどうしても必要なとき以外はしないほうがいい」という考えが一般的になったのです。
あなたも正座に対してこのような印象をお持ちではありませんか。これが間違いであることは、本書の中で明らかにしていきます。そして、正座の効能と腰痛がなぜ起こるかということをご理解いただければ、日本人が正座をしなくなったから腰痛が増えたという見解にご納得いただけるでしょう。
もちろん、「朝30秒の正座」健康法の理論だけでなく、腰痛を治すことを目的とした正座のやり方についてもわかりやすく説明していきます。
とにかく、正座は足がしびれるとか、痛いとかいっても、腰痛を治すための正座の時間はたった30秒です。
遠くの治療院に通わなくてはいけないとか、料金がかかるというものではありません。道具も不要ですし、ややこしい体操や疲れるエクササイズではないので、ご年配の方でも無理なく長く続けられるはずです。
まずは気軽にはじめてみませんか?
金 聖一