ひと言で言えば、職場における部下の能力やキャリアがバラバラな中で、それぞれの部下の成長段階に合った育成や指導ができていないという点に問題があるのです。
ここで少し、私たちの自己紹介をさせてください。私たちが所属するリクルートマネジメントソリューションズは、人材育成や組織開発などを事業の柱としています。人材育成のトレーニングは年間1900社の企業から、約14.8万人の受講者にご参加いただいています。トレーニングプログラムには、様々な対象やテーマのものがありますが、特にマネジメント・リーダーシップ開発のプログラムを中心にしています。
さて、多くの企業にトレーニングプログラムを提供する中で、マネジャーの効果的な部下指導・育成には、ある「共通点」が見えてきました。
うまくいっているマネジャーは、部下の成長段階をきちんと捉え、その「段階」に合わせた仕事の任せ方、経験の積ませ方、仕事のプロセスでの関わり方を意図的に行っていたのです。
新人には新人、入社3年目の若手には若手、中堅社員には中堅の、効果的な育成方法があります。にもかかわらず、同じ「一般社員」や「部下」というくくり方で、皆同じように指導・育成しようとしてしまう。もっと言えば、新人以外の部下には特に意図的な育成はしていないというマネジャーも少なくありません。こうした状況が、「一皮むけない中堅」を生んでいたのです。
「段階」に合わせた部下育成は、
業界や職種を越えた共通性がある
我々は、企業で働くビジネスパーソンにインタビュー調査を行い、研究を深めました。驚くことに、「段階」と、それに合わせた「育成方法」は業種や職種を越え、共通性が高いことが分かってきたのです。それは言わば、部下の成長段階を捉え、指導・育成する際の「ものさし」と言ってもよいのではないでしょうか。この「段階」が後ほど紹介する、「ビジネスパーソンの10のステージ」というものです。
・部下には段階がある
・段階に合わせた育成方法がある
・段階と育成方法は業種や職種を問わず普遍性がある
この3点を押さえた上で、今それぞれの部下がどの段階にいるのか、そしてどういった育成方法が有効なのか、もっと具体的にどんな言葉がけや仕事への期待をかければいいのかなどについて、本書では分かりやすく掘り下げていきます。