転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。ビジョナル創業者、南壮一郎氏に大きな影響を与えた人物の一人が現USEN-NEXTホールディングス副社長の島田亨氏です。南氏が創業したビズリーチに投資したエンジェル投資家であり、東北楽天ゴールデンイーグルス時代、球団トップとして仕えた人物でもある。島田氏は優秀な人を見抜くために、ある一つの指標を判断基準としているそうです。(聞き手は蛯谷敏)
■インタビュー1回目▶「USEN-NEXT島田亨副社長「リーダーは腹から信じる言葉で組織を導こう」」
――前回のインタビューでは、リーダーが自分の言葉で組織を導くことの重要性を教えてもらいました。リーダーが定めたミッションを実行するスタッフの姿勢も、大切になりますか。
島田亨氏(以下、島田):そうですね。やっぱり、最初に優秀な人を採るのはカギだと思います。ただ、この見極めが難しい。「優秀な人」って、見た目ではなかなか判断できませんから。個々の能力だけでは測れない部分もありますし。
――どのように見極めていたのでしょうか。
島田:一言で説明するのは難しいのですが、私は「正しいことを言っているか」を一つの判断基準にしていました。尖ったことを言うけど、でも本質的には正しいことを言っている。自分に利益誘導して発言しているんじゃなくて、会社の目標に合致した考え方をしているのか。それを見ていました。
南壮一郎や小澤隆生は、まさにそのタイプの人間です。でも、傍から見たらバランスがめちゃめちゃ偏っていますよね(笑)。すごく優秀なんだけれど、尖って見える。本当は、違うんですよね。
ただ、その言っている正しいことが、当時の人たちには理解されなかったこともあります。もっと分かりやすく言えば、ずっと野球をやってきた人たちは、すぐにはそれを受け入れられなかったんです。
例えばあるとき、南が球場にテントを張って子どもたちにキャンプ体験を提供したいと言い出したんです。おもしろいアイデアだけど、ずっと野球をしている人からすると、「何を考えているんですか」と感じてしまう。でも、冒頭に紹介したミッションに照らし合わせれば、「正しい」わけです。
あるいは当時、小澤さんがあまりにも尖りすぎて(笑)、組織的に物議を醸したことがあったんです。
でもそのとき、私ははっきりとこう言いました。「いつも、誰も思いつかないようなことを言うから、小澤さんはハチャメチャなイメージを持っているかもしれないけど、うちの球団で最も正しいプロセスで仕事をしているのは小澤さんだと思うよ」と。小澤さんは、物を決めるときに決して適当には言わない。決断する前には必ず調べている。そして、必要な情報はメンバーで共有し、上だろうが下だろうが関係なく、審議するプロセスを経る。
これだけまともにプロセスを踏んで仕事を進めている人は、当時はそうそういなかった。つまり彼は、個人に利益誘導しているんじゃなくて、正しいことを考えて、正しいことを発言している。決して誰かを壊そうとしているわけではないんです。
こういう人は、リーダーが全力で守らないといけません。少し高飛車な言い方になりますが、小澤さんも南さんも勘違いされやすい人なので、そこはリーダーとして守ってきたつもりです。(談)
今回、紹介したエピソードのほか、ビジョナルの創業ノンフィクション『突き抜けるまで問い続けろ』では、起業の悩みから急拡大する組織の中で生まれる多様な課題(部門間の軋轢や離職者の急増、組織拡大の壁)を、ビズリーチ創業者たちがどう乗り越えてきたのかが、リアルに描かれています。