コロナ禍で市場環境が激変した13業界について、それぞれ倒産危険度ランキングを作成した。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#16では、電機・精密業界を取り上げる。20社が危険水域に入った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
週末の家電量販店は売り場で明暗
時計売り場は閑古鳥が鳴く
「パパ、このゲーム欲しい!」。子供からは、マスク越しにこんな声が飛び交う。
8月下旬の週末。東京・新宿にある大手家電量販店のゲーム売り場を訪れると、「Nintendo Switch」やゲームソフトを買い求める多くの家族客で混雑していた。
新型コロナウイルスの感染拡大は、変異株の流行もあって終息の兆しが見えない。しかし巣ごもり需要を背景に、ゲーム業界は活況を呈している。
ゲーム大手、任天堂の2022年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比9.9%減の3226億円、営業利益は同17.3%減の1198億円と減収減益だった。とはいえ、前年同期は1度目の緊急事態宣言が発令され、巣ごもり特需の寄与が特に大きかった時期だ。
前々年同期と比べると、売上高は約1.9倍、営業利益も約4.4倍と、任天堂はコロナ禍の恩恵を引き続き享受している。
家電量販店ではゲーム売り場の他にも、エアコンや冷蔵庫の売り場がにぎわいを見せ、店員が熱心に商品の説明をしていた。在宅勤務の普及により、自宅で過ごす時間が増えたことで、買い替え需要も高まっているのだろう。
一方、閑散としているのが、時計売り場だ。一人も客がいない売り場では、店員同士が暇そうに談笑している。
巣ごもり需要で多くの家電製品が好調に推移する一方で、市場が縮小した“負け組”が時計業界だ。外出自粛やリモートワークなどによって腕時計の需要が低迷し、時計市場は大幅に縮小したのだ。
日本時計協会によれば、20年の日本の時計メーカーの完成品総出荷数量(輸出と国内出荷の合計)は、置き時計などの「クロック」が前年比16%減の800万個。腕時計などの「ウオッチ」に至っては、同33%減の4400万個だった。
この家電量販店の売り場による明暗が示すように、電機・精密業界では需要が二極化しているといえよう。
ダイヤモンド編集部が作成した電機・精密業界の倒産危険度ランキングで、危険水域に入った会社は20社。負け組の時計業界からは、誰もが名前を知る老舗時計メーカーも名を連ねる。
経営の苦境が浮き彫りになったところはどこか。ランクインした企業の顔触れを見ていこう。