廃業急増!倒産危険度ランキング#15Photo:cnythzl/gettyimages

コロナ禍で市場環境が激変した13業界について、それぞれ倒産危険度ランキングを作成した。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#15では、鉄鋼業界を取り上げる。10社が“危険水域”に入った。高炉メーカーが再び上位にランクインした。(ジャーナリスト 名古屋和希)

コロナ禍が鉄鋼需要低迷に追い打ち
構造改革に踏み切る転機に

 新型コロナウイルスの感染拡大は、米中貿易戦争で世界的な鉄鋼需要の低迷にあえぐ鉄鋼業界に追い打ちをかけた。もともと鉄鋼業界は、世界の粗鋼生産量の5割を占める中国勢との競争激化や国内設備の老朽化などの課題に直面してきた。コロナ禍は各社が構造改革にこぞって踏み切る転機ともなった。

 早速、倒産危険度ランキングを見てみよう。鉄鋼業界で1位となったのは、特殊鋼老舗で神戸製鋼所グループの日本高周波鋼業。倒産危険度を示すZスコアは前回(昨年)から大幅に悪化した。

 新型コロナの影響で特殊鋼や鋳鉄などが大きく落ち込んだほか、製造所の固定資産の減損損失として84億6400万円を計上。2021年3月期の純損益は64億4500万円の最終赤字(前年同期は4900万円の赤字)となった。

 減損処理に伴って利益剰余金がマイナスとなり、6月の株主総会では累損を解消するための減資の提案が可決された。一方、22年3月期の純利益は5億円となる見通しで、3期ぶりの黒字転換となる。前期の減損処理による減価償却費の減少が業績を押し上げる見込みだ。

 厳しい事業環境だった昨年に比べ、足元では新型コロナの影響で低迷した鋼材需要が自動車向けなどを中心に復調し、各社の業績は急速に回復しつつある。

 だが、これは一時的な鋼材市況の需給逼迫によるもので、「今後は調整していく」との見方が強い。世界の鋼材需給は最大の生産国である中国の動向に左右されるという状況は変わっておらず、各社の業績回復が順調に続くかどうかは不透明だ。

 こうした先行きが見通しづらい環境下で、前回に続いて高炉メーカーが上位にランクインした。“危険水域”に入った10社の顔触れを見ていこう。