世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

【日本の造船業】世界シェア1位から3位に転落した理由Photo: Adobe Stock

日本、中国、韓国に三つ巴状態!

 高度経済成長時代、日本の主力産業は鉄鋼業や造船業、アルミニウム工業といった重厚長大型産業でした。1960年代後半、日本の造船業は飛躍的な発展を遂げました。

 日本の造船竣工量は1965年の553万総トンから、1973年の1419万総トンへとおよそ3倍に増加。世界シェアの48.5%を占めました。

 この間、船舶輸出量は1965年の299万総トンから1973年の968万総トンへと急速な伸びを示し、花形の輸出産業として日本経済を支えていました。

 これは、この間の世界経済の成長による海上輸送の規模拡大のみならず、1967年の第三次中東戦争にともなうスエズ運河の閉鎖も影響しています。

 スエズ運河の閉鎖は海上輸送ルートの長距離化を発生させ、特に鉱油兼用船の建造需要を生み出しました。大型タンカーの需要が高まり、早くから大型船の建造体制を整えていた日本には大変有利でした。

 日本の造船業は長崎県や瀬戸内地方に集中しています。長崎県はリアス海岸が発達して入り江が深く、波が穏やかであるため大型船の建造に適しています。瀬戸内地方は南北を山地に囲まれて、日本の中では年降水量が少ない気候です。

 船の建造は溶接をともない、また外での作業が多いことから晴天日数の多い地域が選好されます。