「社外のリソース」とつながることで、
私たちは確実に成長する
そして、今、こう思います。
リモート・マネジメントに出会ってなければ、「書家」としての人生はなかっただろう、と。
もしも、職場に縛り付けられる従来型の「課長1.0」のままでいたら、私は、おそらく「会社人間」として人生を終えていたに違いありません。それもひとつの生き方ではありますが、「書家」としての夢を追いかけることなく、いつか人生を後悔することになったかもしれません。
リモート・マネジメントによって、自由を手にしたからこそ、それまで知り合うことがなかったような個性的な人物と巡り会い、大きな刺激と影響を受けたことによって、私なりの人生が開けていったのです。
もちろん、私は何も「独立」をおすすめするわけではありませんし、そのために「課長2.0」を推奨するわけでもありません。すでに触れたように、私自身、社外のリソースとつながることで、ソフトバンク社内での仕事も大幅にバージョン・アップすることができました。
重要なのは、「課長2.0」によって自由を手にして、社外のリソースと広く深くつながっていくことです。そこには、私たちの能力を高め、人生を豊かにしてくれる「出会い」が必ずあります。会社にとどまるか、転職・独立するかにかかわらず、その「出会い」が私たちを大きく成長させてくれるのです。
だからこそ、私は、コロナ禍によって、リモート・マネジメントが一般化しつつある現状を肯定的に捉えたいと考えています。
そして、一人でも多くの管理職の方々に、「課長2.0」を実現していただき、ご自身の「人材価値」を最大化するとともに、充実した人生を切り開いていただきたい。そんな思いで、私なりに磨き上げてきたリモート・マネジメントの手法を『課長2.0』という一冊の本にまとようと思い立ちました。
管理職が頑張らないほうが、
マネジメントはうまくいく
もちろん、私にも「答え」が完全にわかっているわけではありません。
現在、全国5ヵ所の書道教室をリモート・マネジメントしていますが、試行錯誤の連続です。今でも、判断に迷ったり、悩んだり、時に小さな失敗もしてしまうのが実情です。リモート・マネジメントは決して容易なものではないと痛感させられる毎日と言ってもいいでしょう。
しかし、だからといって、リモート・マネジメントは、何か「特別な能力」や「新奇なノウハウ」がなければできないというものではないと思います(ネット・ツールの使用に習熟したり、ネット上のコミュニケーションに適応するなど、新たに身につけなければならないことはありますが……)。
むしろ大切なのは、「マネジメントとはそもそも何なのか?」という原点をしっかりと見つめ直すことです。そして、マネジメントの「本質」さえつかむことができれば、必ず、リモート環境にも適応することができるようになると確信しています。
リモートワークにおいては、メンバーの行動を細かく管理したり、コントロールしたりするのは不可能です。それよりも、「自走」できるメンバーを育てて、彼らが全力で走れるようにサポートすることが重要です。そもそも、管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」を借りて結果を出すのが仕事。主役はあくまでもメンバーですから、管理職が全面に出て頑張るのは筋が違います。
むしろ、イメージすべきなのは「合気道」です。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人こそが、リモート時代に生き残る「課長2.0」へと進化していくのだと思うのです。
そして、そのような管理職になるために必要な「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をまとめたのが『課長2.0』です。本書を読んでいただいて、いろいろなご意見をお寄せいただくことで、ともにマネジメント力を高めていければと考えています。