コロナ禍と米中対立でサプライチェーンの立地はグローバル型から消費地隣接型へと変わる。そうした構造変化に対応するために、世界的に設備投資需要は高まっていく。日本株もその恩恵を受けるが、その中でも成長が期待できる“2つの業種”を挙げる。(クレディ・スイス証券チーフ・インベストメント・オフィサー 松本聡一郎)
ポストコロナではグローバル化から多極化へ
経済効率の優先順位が下がる
新型コロナウイルスのパンデミックが提起した大きな問題の一つは、「私たちが地政学的な転換点にいるのかどうか」ということだろう。
東西冷戦終結後、世界経済成長の柱であったグローバル化は推進力を失い始めていた。リーマンショックで格差拡大が政治問題化したことで、世界はグローバル化の限界に気付き始めていた。今回のパンデミックで、それは大きな転換点に達したと考えている。事実パンデミックへの対応は、各国政府が自国優先した行動をする傾向を強め、グローバル化の下で重視されてきた国際協調の姿勢は後退した。
人類の歴史において、疫病の広がり(パンデミック)に直面したとき、我々は社会や経済の仕組みを変化させ、科学的進歩を促し、発展を続けてきた。疫病を完全に封じ込めるには長い年月が必要なことも歴史から学ぶことができる。また将来のパンデミックを完全に排除することもできない。これから世界は、新型コロナウイルスと共生し、成長していける社会・経済への転換を目指すことになるだろう。
新たな国際関係は、自国の国益に応じた多国間連携の形をとり、世界はより多極化の傾向を強めていく。多極化する世界の優先順位は、グローバル化の世界で重視された経済効率優先と異なる。