コロナ第5波でも、第1波と同様に「不要不急の入院や手術」は延期された。さらに「院内クラスター(集団感染)発生」「病院スタッフの感染によるマンパワー不足」などで病棟閉鎖や手術数制限を余儀なくされた病院も多く、コロナ患者を診る機会は増えたとはいえ、コロナ治療最前線以外の医師は比較的手が空いている。それは私も同様だ。予定手術がいくつも延期になり、その分の報酬は入ってこない。医師需給の調整弁でもあるフリーランスの宿命だが。

 しかしながら、第1派のような大幅な減収にはならない見込みである。21年4月ごろから始まったコロナワクチンの集団接種で医師のワクチン接種や問診アルバイト案件が急増し、「突然暇になった医師」たちはワクチンバイトで稼ぐことができているのだ。

コロナ第5波で医師たちが
ワクチン接種に大移動

 ワクチン接種開始当初、医師の確保がボトルネックといわれていたため、医師のワクチンバイトの単価が高騰。その“バブル”ぶりは、すでに各メディアで報道されている通りだ。だいたいワクチンバイトは医師求人サイトで限定公開されており、6月ごろには「1日20万円」レベルの案件も見掛けたほどである。

医師求人サイトに掲載されているワクチンバイト案件医師求人サイトに掲載されているワクチンバイト案件 Photo by Seiko Nomura 拡大画像表示

 従来、高額な医師アルバイトは北東北や東北海道などの遠方の医師不足地域や夜間の救急、「精神科指定医」「内視鏡検査」など付帯条件が厳しかったり、さもなくば美容系などの医療業界では正直ステータスが低い案件が多かった。

 一方、ワクチン業務は「都心部・昼限定・命に関わらない・専門医資格や高度な技能が不要・社会貢献度(世間体)高」。本来なら供給過多で低報酬な条件であるにもかかわらず高報酬というアルバイトが大量出現したのは、日本医療史上初だったのではないか。

 当初接種会場では、従来の健康診断バイトなどでは定番だったフリーター医師・ママ女医・セミリタイア高齢医師がバブルを謳歌していたが、徐々に「有休を取った医大教授」などの堅い職場の医師をチラホラお見掛けするようになった。

 医師人気の高い都心部会場では、8月ごろになると「公立病院の中堅医師」「当直明け休みを利用した救急医」のような正統派医師の比率が上昇し、「いかにもフリーター風」「問診スピードが超遅い高齢医師」といった輩は次第に見掛けなくなってゆき、接種会場によってはオンライン問診も導入され始めたため、医師の頭数も当初ほどは必要なくなったため、前述のようなヤバい医師たちは徐々に淘汰されていった。

 さらには、肝心のワクチンが不足し接種業務が滞るようになった夏ごろには、ワクチン業務の医師も余り出した。徐々にアルバイト単価も下がってゆき、9月では「時給1万円前後」がワクチン接種バイトの相場となっている。