「フロー」と「ストック」

ひろゆき氏:僕の世間のイメージは、「西村博之」ではなく「ひろゆき」ですからね。「ひろゆき」だったらこういうことを言う。「ひろゆき」だからこれが許される。というように、キャラクターが出来上がってしまっているんですよね。

 それが一人歩きして、いまや「東スポ」とか「日刊スポーツ」とかが、僕の発言をいちいちニュースにして報道しているわけです。あれなんか、「切り抜き」の最たるものですからね(笑)。

――一気に消費されていますよね。まあ、ここでの記事もそれに近いんですが(笑)

ひろゆきブーム徹底解剖「いますぐ有名になりたい人がやるべきこと」

ひろゆき氏:一応、種岡さんにとっては『1%の努力』という本を売らないといけない大義名分がありますからね(笑)。他のニュースサイトは、今の一時的なPVを稼ぐことが大義名分なのかもしれません。そういう「フロー」がネット上にたくさんあって、「ストック」として本が売れたり、僕のYouTubeの登録者が増えている構図ですね

 で、年末にかけて、僕がそろそろ飽きられてくると思うので、次なる人が現れるという。そのサイクルにいるだけですよね。

――ブレイクする人は、その年の顔みたいになりますよね。年末くらいに流行語大賞とかが出て、それで年明けと共にみんなが忘れる……。

ひろゆき氏:テレビのサイクルは、そうなっていますよね。

 だから、今の世の中の必勝法は、ネットで短い動画でバズって、うまくテレビに呼ばれて、求められていることをやって、1年間くらい引っ張って、それで手に入れた「知名度」を引っさげて、その後はビジネスをやったりコメンテーターをやったり本業を拡大して食っていく……、というのが成功パターンですよね。

 テレビにしがみつくんじゃなく、それを踏み台にするのが、賢い人の勝ちパターンだと思います。一時期、テレビに出た人が、その後、テレビで見なくなったからって、ネットやSNSさえあれば、「消えた人、終わった人」にはなりませんから。それだけ、テレビの立ち位置が弱くなったということでもありますし、それでも影響力は残っているということでもあります。

――テレビでそのまま生き残る道もあるんですかね?

ひろゆき氏:それもあると思いますよ。でも、そうなると、発言がどんどん面白くなくなっていくんですよね。長年、テレビのお昼のニュース番組とかやっている司会者の人って、別に面白いことも斬新なことも言っていないじゃないですか。

 たぶん、テレビ局が求めていることを肌で感じ取って、あまり自分を出さずにソツなくこなせることがテレビの中の優秀さなんだと思います。ネットで有名になってイケイケだった人も、タレントとして活躍するうちに、どんどん落ち着いていくじゃないですか。それと同じですよね。

――切り抜きで有名になる道も、タレントとして生きていく道も、いずれも「プライドをなくすこと」という意味で共通していますね。

ひろゆき氏:「大人になる」みたいな話ですね(笑)。

――ひろゆきさんって、たぶん、絵本の『裸の王様』の中で「王様は裸だ!」と言った子どもみたいなスタンスだと思うんですよね。権威とか空気とかを気にせず、「いや、お前、裸じゃん?」って言える人というか。そこが面白いと思っているので、そのままキャラを貫いてほしいなと思っています。

ひろゆき氏:ヘタにサービス精神はないですからね。このままのスタンスでやっていくつもりです。

ひろゆき
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、34万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。