力学変化を読み解くカギは他にもある。豊田章男トヨタ体制の経営陣容がここへきて大きく変わっているのだ。

 社内取締役は、現在、豊田代表取締役社長のほかに内山田竹志代表取締役会長、早川茂代表取締役副会長、小林耕士代表取締役、ジェームス・カフナー取締役、近健太取締役の総勢6人が担っている。

 絞り込まれた陣容であり、さらに担当の職掌と位置づけを分析すれば、いずれ近い時期に社長職をジェームス・カフナー氏に交代するのではないかという見方が台頭してきている。

 カフナー氏は、トヨタの次世代技術開発のカギを握り、豊田社長が私財も投入している子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスCEOを務める、腹心中の腹心だ。また、社長の肝いりの一大事業であるウーブン・シティのマネジメントを仕切るホールディングス傘下の「ウーブン・アルファ」の代表取締役には、社長の長男である豊田大輔氏が就いており、両者は緊密な関係にある。そうした関係性も含めて、現職の取締役であるカフナー氏を次期社長として推測する声は根強く、仮にカフナー氏が就任すればトヨタ初の外国人社長が誕生する。

 社長交代が自工会会長3期目の間となるのかは分からないが、もし社長交代により豊田氏が実力会長といった職務に就けば、その行動力と言動の発信力から国策に連動する財界活動への期待も高まることになろう。

 ただし、最近の日本製鉄との電磁鋼板を巡る特許問題や国内販社の不正車検問題など、トヨタ内部にほころびが生じることのないような体制固めをしておくことが条件だ。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)