「ツタヤがピザハットの買収を計画しているとする。はたして、これはよいアイデアだろうか?」――なんの前ぶれもなく面接官から、このような質問を投げかけられるのが、戦略コンサルティング会社の面接なのだという。こうした事前の準備なしには対応不可能と思われるニッチな分野のベストセラーの最新版、それが『戦略コンサルティング・ファームの面接試験 新版』である。著者はハーバード大学就職課を皮切りに世界中で10万人以上の戦略コンサルタント志望者の面接を指導してきた人物。面接試験対策だけでなく、コンサルタントのような戦略思考が身に着けられると評判の本書から、ポイントを紹介していく。(訳:辻谷一美)

コンサル流メモPhoto: Adobe Stock

戦略コンサルタントのメモの取り方

 ケース面接に取り組んでいる間は、メモを取ったほうがよい。メモの取り方にこれといった決まりはないが、紙は横長形式で使うことをお勧めする。1枚目の紙は、スペースを左1/3と右2/3に分けて、左側には問題の内容を書きとめる。

 たとえば、「あるビール会社がミネラルウォーター市場への新規参入を検討している。これは良い案だろうか?」という問題が出されたとしよう。まず、メモ用紙にスペースを分ける線を引く。左側のスペースに問題の内容を書き、右側のスペースには考えるべき論点の構造をまとめる。次のような感じだ。

戦略コンサルタントのメモ

 メモを取るためのノートは無地のものでもかまわないが、以下の理由から、方眼紙を使うことをお勧めする。

●方眼紙のほうがメモをきれいに書きやすい。
 ■テキストボックス、グラフ、矢印、樹形図、バリューチェーン、フローチャートなどをきれいに書くことができる。
 ■可能であれば、自分が書いたメモを面接官に見せながら、自分の思考プロセスを伝えるのがよい。このような行動は、あなたが面接受験者ではなく、あたかもプロジェクトのチームメンバーであるような印象を面接官に与えるだろう。これは非常に重要なアドバイスであり、できる限り実行すべきだ。
●方眼紙のほうが単純な計算ミスを防げる。ケースの途中で計算を行うことは多いが、先に述べたように電卓は使えない。特に、大きな数字を扱う場合は桁数を間違えてしまう人が多いが、方眼紙であれば数字が横一列にきれいに並ぶので、どこかでミスをしていないかをチェックしやすい。
●方眼紙に書いたメモは整然とまとめられ、面接官があなたの思考プロセスをたどりやすくなる。あなたがメモを取っている間、面接官はそれをつぶさに見ている。時には、面接官があなたのメモを手に取って、何を書いているか、どのように思考をまとめているか、計算をどのように行っているか、読みやすい字で書かれているかをチェックすることも十分ありうる。

 ケース面接が始まったら、メモ用紙を5枚取り出して、ページ番号を書く(これは面接前にやっておくほうがよい。時間の節約になるし、きちんと準備しているという印象を与えることができる)。一通りメモを書き終わった後にこの5枚の紙を見れば、ケースの全体像をつかむことができる。特に最初のページには重要な情報が書かれていることが多いので、ケースの途中で何度か見返すことになるだろう。ケースで与えられる情報の中には、最初の時点から重要な意味を持つものもあれば、重要に見えながら実はあまりたいした意味がないものや、ケースが進んだ後半段階になって重要な意味を持つものもある。

 計算用の紙を別に分けるというのも1つの案だ。こうすれば、メインで使用するメモ書きが整然として見やすいものになる。ただし、計算用の紙を分けて使う場合は、番号を振るなりして、メインとなるメモ書きのどこに対応する計算なのかが分かるようにしておく必要がある。そうしておかないと、計算を見直すときにどこを見ればよいのかがすぐにわからず、多くの数式の中から探し出さなければならなくなってしまう。

 また、ケース面接では、面接官が途中で図表やグラフを提示してくることがしばしばある。もしも、あなたが渡された図表やグラフの資料にメモを書きたい場合は、必ず面接官の許可を得よう。面接官はその資料を1枚しか持っていない可能性もあるからだ。