ほとんどの人に共通する悩み、それは「お金の悩み」だ。「お小遣いが足りない」、「毎月家計が赤字」、「家を買いたいけど頭金がない」、「老後のお金をどうしよう」……。そして誰もが、こう思う。「一生、お金に困らない生活をするにはどうすれば良いのだろう」と。そんな悩みに応える1冊が、経済ジャーナリスト荻原博子氏の『一生お金に困らない お金ベスト100』だ。この1冊に、いろいろなお金の秘策が詰め込まれている。著者インタビュー1回目は、みなさんも楽しみにしているボーナスの有効活用についてうかがった。
(取材・構成/鈴木雅光、撮影/疋田千里)
「老後の不安」につけこまれるな!
―――いよいよボーナスシーズン。この時期になると「有利な金融商品はコレ」とか「ボーナスで資産運用の第一歩を」といった記事を目にするようになります。荻原さんが今回出された本『一生お金に困らない お金ベスト100』には、大事なお金を守り、増やすためのTipsがたくさん詰め込まれていますが、ことボーナスに関しては、まず何をすれば良いのでしょうか。
荻原博子さん(以下、荻原):そうですね。まずはボーナスのお金を大きく増やそうだなんて野心は持たないことです。
―――え! どういうことでしょう。
荻原:みなさん、恐らくお金に関しては漠然とした不安を抱えていると思います。その不安の多くは「老後のお金」。「人生100年時代、働けなくなった時にお金がなくなったら大変」ということです。
では、その不安を解消するためにはどうすれば良いのか。ということで、多くの金融機関は投資信託などの投資商品を勧めるわけです。
―――不安だから増やしましょう、というわけですね。
荻原:でも、たとえばボーナスとして支給された50万円で投資信託を買ったとしましょう。それは5年後、あるいは10年後に100万円になっているのでしょうか。
もちろん、そうなっている可能性があることは否定しません。でもね、買った投資信託が半値になったなんて話は、これまで何度もありました。恐らく今、投資信託で儲かっている人は、この10年くらいで投資を始めた人が多いのではないでしょうか。こういう人は、株価が大きく下げた時の怖さを知りません。
たった2年で半値に!
荻原:今からたった15年くらい前、「サブプライムショック」や「リーマンショック」という大きな金融市場の混乱があって、その時、値段がそれこそ半分以下になった投資信託もありました。
―――ちなみにどんなものがあったんですか?
荻原:かつて「1兆円ファンド」といって話題になった、野村アセットマネジメントの「ノムラ日本株戦略ファンド」。多くの人はここに退職金を預けましたが、その値段は、たった2年で9392円(2007年7月9日)から、3579円(2009年3月9日)まで値下がりしました。半値どころか60%以上もマイナスです。
だから、ボーナスで投資をしてみようと考えている人もいると思いますが、悪いことは言いません。ボーナスで投資なんておやめなさい。
お金持ちがやらないボーナス2つの使い道
―――早速、荻原節が炸裂していますが、では、支給されたボーナスを増やすための投資はダメだとしたら、一体どうすればいいのでしょう。まさか浪費しまくるということではないですよね。
荻原:ボーナスを「普段の生活費の補填」や「単純消費」に使う人はお金が貯まらない人。お金持ちはそんな使い方はまずしません。
ボーナスで生活費の補填をするなんてもってのほか。毎月の給料の中で買えないものは買ってはいけないものなのです。ではボーナスはどう使うか。負債を抱えている人は、その負債をなるべく早く減らすことです。
―――なるほど。ボーナスは増やすでも、使うでもなく、返すことに使う。
荻原:さきほども言いましたが、投資信託なんてマーケットの暴落に直面したら、あっという間に半値になります。でも、株価が半分になったとしても、ローン金額は半分にはなりません。当たり前ですが、借りたものはしっかり利息もつけて返済する義務が、債務者にはあるのです。
住宅ローンなんて、負債の最たるもの。このところタワーマンションブームがありましたから、今は会社員でも数千万円の住宅ローンを抱えている人が、珍しくも何ともありません。なかには全額フルローンの頭金なしで高額物件を購入したという豪の者もいます。これ、考えようによっては物凄いリスクです。
―――どういうことでしょう。
荻原:だって、ギリギリのローンを組んでいる状態で、勤めている会社の経営が悪化して給料が減ったり、最悪、勤務先が倒産してしまったら、住宅ローンの返済がたちまち滞ることになります。そうしたら、住んでいるところを追い出されてしまいます。
これは、買った投資信託の値段が下がったなんてこととは比較にならないほどのリスクですよ。投資信託で損をしたとしても、解約すればそこから先、損失が拡大するのを防げますが、住宅ローンは自己破産するまで返済し続けなければなりません。