転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。本書で取り上げたビズリーチや、その創業者である南壮一郎氏に、大きな影響を与えたのが、サイバーエージェントの藤田晋社長や同社の幹部たちです。人事制度や人材活用で数々の助言を与えたサイバーエージェント常務執行役員の曽山哲人さんに、ビズリーチに影響を与えたサイバー流の人材育成について話を聞きました(聞き手は蛯谷敏)。
■インタビュー01回目はこちら>「サイバー流人材育成術!「決断経験」の数を増やして若手を育てる」
――曽山さんは、サイバーエージェントでは人を育てる時に、「決断経験」の数が重要だとおっしゃいました。自分で考えて決める経験が、成長にとって欠かせない、と。実際、自分で決めたいと考える社員は増えているのでしょうか。
曽山哲人氏(以下、曽山) 昨今はリモートワークの環境が当たり前になり、上司と部下のコミュニケーションが減る中で、自分でやれることは自分で決めたいと考えている若い人も多いんです。
そのためには、彼らが自律的に意志決定できる仕組みを構築することが必要だと考えています。まだ構想の途上ですが、我々の中で、この決断経験を増やすためのフレームワークをつくっています。社員が自律的に意志決定ができるという意味で、「自走サイクル」と名付けました。
自走サイクルには、具体的に4つのステップがあります。
「抜擢」→「決断」→「失敗」→「学習」。そして新たな「抜擢」に、というループをどんどん回していくイメージです。順に説明していきましょう。
まず「抜擢」は、その社員がこれまでやったことのない仕事を任せるステップです。理想的な姿は、本人にやりたいことを表明してもらって、「いいじゃん! それ、やろうよ」という形で抜擢することです。自分で手を上げた仕事は、本人もやる気が出ますから。
もし、自分からやりたいことを言わない場合にも、例えば小さな役割をこちらで指名することも方法です。ポイントは、責任感を醸成することです。
次に「決断」です。任された仕事に対して、自分の意志で方向を決めていきます。自分で決めるということは、あらゆる情報を吸収して、自ら問題意識を持って考えるということなので、このプロセスをできるだけ多く経験すると育っていくわけです。
3つ目のステップが、「失敗」です。当然、チャレンジをすると、すべてが成功するわけではありません。むしろ取り組む事業が大きくなるほど、成功よりも失敗の確率の方が高くなる。大事なことは、大きな失敗というよりも、進めるに当たって想定していなかった壁があるなどの小さな失敗の存在です。この時に、どれだけ軌道修正をして次につなげられるかが大事になります。その意味で、「失敗」は最後のステップである「学習」とセットになったプロセスであると言えます。
個人的には、自走型の人材が生まれる過程においては、この「失敗」がとても大事な要素になります。失敗することは当たり前である、と。これが経営チームや人事、リーダーに覚悟として組み込まれているかどうかで、人の成長、才能開花の度合いは変わっていくんです。(2021年12月22日公開記事に続く)