気づく力を高めるには、自由に発信できる場を作るべき

 ここで注意すべきなのは、現場の従業員にいきなりアーキテクトの視点で考えるようにと言うのには、無理があるということです。

 前述のとおり、経営者や部門長はその役割上、川上の視点から考えることに慣れています。

 一方で、業務の中心が川下である現場の従業員は、業務の特性上、川下の視点で考えることに慣れています。

 では、どのようにして現場が川上の視点で考えられるようになるのでしょうか? 筆者が推奨するのは、気づく力を高めるための仕組みをつくるというものです。

 例えば、気づいたことを全社会議で、持ち回りで共有するような場をつくる、などです。アウトプットするためにはネタを考える必要があるので、自然と気づく力が養われます

 この際のポイントは、全員が気兼ねすることなく自由に発言できるよう、個人攻撃や対案なしの一方的な否定は禁止することです。

 また、部門や肩書などの上下関係に関わらずお互い率直なフィードバックを言い合える環境を用意することで、全員が全体感を持って思考するためのトレーニングになります。

 質問者の経営者仲間の会社では、きっとこうした環境づくりに成功し、現場の皆さんが気を張らずして自分の意見を発表する場を存分に活用できているのではないかと思います。

細谷 功(ほそや・いさお)
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・IGPIシンガポール取締役CEO
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て現職。現在はシンガポールを拠点として政府機関、グローバル企業、東南アジア企業に対するコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務に従事。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)、ITストラテジスト。