「元・日本一有名なニート」としてテレビやネットで話題となった、pha氏。
「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだ」と語り、約100冊の独特な読書体験をまとめた著書『人生の土台となる読書』を上梓した。
本書では、「挫折した話こそ教科書になる」「本は自分と意見の違う人間がいる意味を教えてくれる」など、人生を支える「土台」になるような本の読み方を、30個の「本の効用」と共に紹介する。
「本の面白さに比べたら、社会とかどうでもいい」
人生で初めて、本を読んで強く衝撃を受けたときのことは今でも覚えている。
それは、中学2年生のときに読んだ、筒井康隆の『虚航船団』という小説だった。
この小説は、気の狂った文房具たちと残虐なイタチたちがひたすら殺し合うというメチャクチャな内容なのだけど、それが異常に面白かったのだ。
読み終わったあと、頭の中が真っ白になって、しばらく茫然としていた。
世の中には、こんなに訳がわからなくて、デタラメなものが存在するんだ。
この面白さに比べたら、学校とか社会とかどうでもいいな。
人と仲良くしたり誰かに評価されたりするよりも、一人で本を読んでいるほうが楽しい、とはっきり思うようになったのは、このときからだったと思う。
「別に救われたいと思って
本を読んでいたわけじゃない」
本当は、本を読むときに、「役に立つか、立たないか」なんていうことはどうでもいいことだ。
僕は本を読むことで救われてきたけど、別に救われたいと思って本を読んでいたわけじゃない。ただ、読むのがとても楽しかったから、夢中になって読んでいただけだ。
何か新しいことを知ることは、とても心がワクワクする。だから人は本を読む。
人間というのはとても飽きっぽい生き物だ。飽きっぽいから、常に変化を求めている。そうした、新しいものに対する好奇心が、人間の文明をここまで発展させてきた。
そして、その好奇心をもっとも手軽に満たしてくれるのが、読書だ。
読書は「自分を覗き込む行為」
読書によって自分の人生が大きく変わった、とは思う。だけど、読書によって自分自身が大きく変わったか、と言われると、そうでもない気がする。
読書は、「自分を変えてくれた」というよりも、「自分をより自分らしくしてくれた」というほうが近い。
まったく自分とかけ離れている本は、読んでも面白くない。
本を読んで面白いと感じるときは、その本の中に自分と重なり合う部分があったときだ。
読書というのは、自分の中を覗き込む行為なのだ。
幼い頃から持っている基本的な性質は、大人になってもあまり変わらないものだ。
その基本的な性質を、言語化して把握して、この世界の中でその性質をどんなふうに使っていけばいいか、ということを知るのに、読書は役に立つ。
「自分の言葉」があれば、自由に生きられる
「自分らしく自由に生きたい」というのはみんなが考えることだ。
だけど、何も考えずに好きに行動しているだけでは、それを実現するのは難しい。
自分らしく自由に生きるためには、言葉や知識が必要だ。
なぜなら、この世界も人間も、言葉によって作られているからだ。
この世界の中で自由に生きるためには、自分の言葉を持つ必要がある。
そうしないと、自由に生きているつもりでも、誰かの作った言葉に縛られているだけで、そこから逃れることができない。
自分の言葉を持つためには、そもそも自分を縛っている言葉がどういうものかを知らなければならない。
それはつまり、「自分が考えていることは、言語化するとどういうことなのか」とか「自分が考えていることは、この世界の中でどういう意味を持つのか」ということを知ることだ。そのときに役に立つのが、読書なのだ。
1978年生まれ。大阪府出身。
現在、東京都内に在住。京都大学総合人間学部を24歳で卒業し、25歳で就職。できるだけ働きたくなくて社内ニートになるものの、28歳のときにツイッターとプログラミングに出合った衝撃で会社を辞めて上京。以来、毎日ふらふらと暮らしている。シェアハウス「ギークハウス」発起人。
著書に『人生の土台となる読書』(ダイヤモンド社)のほか、『しないことリスト』『知の整理術』(だいわ文庫)、『夜のこと』(扶桑社)などがある。