確定申告の対象は、自営業者に限りません。会社員やパートタイマーでも、確定申告によって還付金を受け取れる(税金が戻ってくる)可能性があります。よく知られているのは、医療費を支払ったり、ふるさと納税をしたりしたケースですが、テレワーク、副業の自腹で支払った経費や、中途退職して年末調整を受けていないような場合、税金を取り戻すチャンスはあるのでしょうか?『いちばんわかりやすい確定申告の書き方』(ダイヤモンド社刊)の監修・土屋裕昭税理士が解説します。

テレワーク、副業の“自腹経費”や、中途退職者の納め過ぎた税金は確定申告で取り戻せる!?<br />Photo: Adobe Stock

テレワークの自腹経費は
確定申告で取り戻せる?

 ご存じのとおり、テレワークにはさまざまな費用が発生します。パソコンやプリンタ、WEBカメラ、コピー用紙などの購入代や、電話やインターネットなどの通信料、水道光熱費などもかかります。こうしたプライベートと業務の両方を兼ねる費用については、自営業者であれば、合理的な基準で按分して、業務にかかった分は経費に計上できます。

 しかし、会社員の場合、事情が違ってきます。一部の企業では、テレワークにかかった費用の補てんとして在宅勤務手当を支給していますが、税制的には支払って当然というものではなく、良心的といえます。というのも、会社員は年末調整の際に収入から「給与所得控除」を差し引かれますが、これは自己負担となっている経費を考慮してのものです。端的にいえば、自腹で支払った1年間の経費は給与所得控除で精算されていることになります。

 そのため、会社員が確定申告をして、テレワークにかかった費用を別途取り戻すことはできません。ここで税制に詳しい人のなかには「特定支出控除は適用されないか?」と考える人がいるかもしれませんが、結論から言うと適用は難しいといえます

 この特定支出控除は会社員のための控除制度です。確定申告をすれば、給与所得控除の範囲に収まりきらない「一部の支出(特定支出)」について、自営業者と同じように経費として認めてもらえるものです。特定支出となるのは「通勤費」「職務上の旅費」「転居費」「研修費」「資格取得費」「帰宅旅費」「勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費)」の自己負担額に限られます(下表参照)。

テレワーク、副業の“自腹経費”や、中途退職者の納め過ぎた税金は確定申告で取り戻せる!?<br />

 特定支出控除の要件等については次項で説明しますが、表からわかるとおり、一般的なテレワークで発生する費用は該当しません。このようにどんな可能性を探っても、確定申告で通常テレワークにかかった自己負担分の費用を取り戻すことはできません。