iDeCoやNISAなどは原則非課税ですが、通常の株取引やFX取引、暗号資産取引で上げた利益には所得税がかかります。株式投資や投資信託の証券口座の種類が特定口座(源泉徴収あり)の人以外は、年間利益(≒所得)が一定額以上あったような場合、確定申告の義務があります。一方、損失の出た人は所得税が発生しないため、確定申告は不要です。ただし、確定申告をすれば、その損失を翌年以降に活かすことができます。『いちばんわかりやすい確定申告の書き方』(ダイヤモンド社刊)の監修・土屋裕昭税理士が解説します。
株や投資信託の取引を複数の口座で行った人は
損益通算で還付の可能性
複数の証券会社に証券口座を開いている人は、ある口座で損失が出てしまった場合、別の口座での株取引や投資信託の売買で出た利益と合算して、所得を減らすことができます。これを損益通算といいます。所得が減れば所得税額も減るため、節税できます。
複数の特定口座(源泉徴収あり)で取引している人の例で見てみましょう。
・A証券での利益:120万円(源泉徴収税額18万3780円)
・B証券での損失:40万円(源泉徴収税0万円)
※所得税及び復興特別所得税15.315%として計算、実際には住民税が別途5%源泉徴収されます。
AとBの証券会社の取引結果を合算すると、次のようになります。
・利益:120万円-40万円=80万円
・源泉徴収額:18万3780円+0万円=18万3780円
本来の源泉徴収額は、利益80万円×15.315%=12万2520円です。18万3780円-12万2520円=6万1260円を納め過ぎていることになります。確定申告をすれば、この6万1260円が還付金として戻ってきます。
上記の例は特定口座(源泉徴収あり)ですが、「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」を損益通算した場合も同じです。
なお、株取引と投資信託の取引の間での損益通算はできますが、FX取引や暗号資産(仮想通貨)取引との損益通算はできません。