『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、組織文化の変革方法についてまとめました。本連載では組織文化に造詣の深いキーパーソンと中竹竜二さんが対談。ともに学び合うオンライングループ「ウィニングカルチャーラボ」で実施したイベントの内容をまとめました。今回のゲストは、レオス・キャピタルワークスの創業者の藤野英人さん。日本のアクティブ投資信託として最大級のファンド「ひふみ投信シリーズ」を手掛けています。投資の世界と組織文化。そこには意外な共通点がありました。(聞き手/中竹竜二、構成/添田愛沙)

■藤野さんとの対談1回目>「「好きな仲間と楽しく働く」を実現するために必要な、たった一つのこと」
■藤野さんとの対談2回目>「人間関係は一瞬で好転させるために必要な、たった一つの力」
■藤野さんとの対談を受けたVoicy配信>「ヒトを成長させる「ゆかし」とは?」「根拠のない自信、ありますか?」
■藤野さんとの対談を受けたnote記事>「人を成長させる「ゆかし」とは?」「根拠のない自信、ありますか?」

ひふみ投信の藤野社長が解説! 成長する会社に必ずある3つの共通点『ウィニングカルチャー』著者の中竹竜二さん(左)とレオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さん(右)

中竹竜二さん(以下、中竹) 対談の冒頭(「「好きな仲間と楽しく働く」を実現するために必要な、たった一つのこと」「人間関係は一瞬で好転させるために必要な、たった一つの力」で、好きな人と楽しく仕事をやろう、という言葉がありました。もしかしたら無意識にかもしれませんが、自分の好きな仲間とピアノをフラットで楽しめるコミュニティ、ネットワークをつくりたいと思って実際に構築した、という原体験があったからなのかもしれませんね。

藤野英人さん(以下、藤野) たしかに、ピアノのサークルをつくることと、「ひふみ」を経営することって、僕にとってはほぼ同じなんです。もともとネットワークをつくることに関心があって、それがネットの世界とうまくかみ合った。インターネットやSNSのフラットパワーのような部分を、自分では割とうまく生かせているんじゃないかと思っています。

中竹 自分のつくりたい世界観の中で、できるだけフラットでいたい。それを藤野さんご自身も、仕事やピアノサークルなど、人との関係の中で実践しているんだと改めて感じました。

藤野 コミュニティにおける空気感や文化が、そのコミュニティの考え方やディシプリンにつながって、新陳代謝する力が働いてくると、会社もサークルも自発的に大きくなっていきますね。

中竹 藤野さんのお話を聞いていると、自分が手放しても、ずっと回り続ける世界をつくりたい、というイメージをすごく感じます。

藤野 うちの社員にはいつも、会社を辞めることは裏切りではないから、どこの会社でも転職支援をするし、逆に戻ってくることも大歓迎だ、と言っています。僕らの会社で成長して起業して、起業した会社に今度は僕や会社が投資して、その会社が公開上場するようになって……。それは素敵なことです。だから起業も応援するし、場合によっては投資もします。

中竹 藤野さんは、普通の人より考えている時間軸が長いんでしょうね。

ひふみ投信の藤野社長が解説! 成長する会社に必ずある3つの共通点Photo: Adobe Stock

藤野 成長や成功する会社って、3つの共通点があるんです。それは、徹底的な顧客目線であることと、考える時間軸が長いこと、つまり長期目線、そしてデータ・オリエンテッド(データに基づいたアプローチ)であることです。

 逆に言うと、ダメな会社にはこの3つがないんです。会社都合主義、短期主義、データを見てるようで見てないというか、好きなデータだけ見ているとか、データを見ていても、それを評価する力がない。

中竹 藤野さんが人や社員と接する時も、これが基準になっているんだと思いました。徹底的に相手目線で話を聞く、すぐに結果を出せるかどうかよりも、その人の将来を考える。でもプロフェッショナルとしてやる以上は、仕事でも成果を出してね、と。

藤野 僕にとっての愛は、この3つなんです。相手目線に立って、長期目線で見て、でも客観的なファクト(事実)はきちんと押さえる。

中竹 客観的な事実とは、投資の世界では1年後にいくら相手に還元できるかという結果ですよね。スポーツも、いくらいいチームをつくったとしても、負けたら評価されないから結果を出さなければいけない。そういう意味では私自身も、共感するところが多いです。

藤野 スポーツや将棋など、ジャンルは何でもいいんですが、ある目的のために一定のルールの中で戦って勝利した経験のある人は、ファンドマネージャーに向いています。ライバルがいて、競争条件があって、その中で戦って勝つという経験は投資と似ているんですよね。

 自分のことを客観視する、状況を調べる、トレーニングする、振り返って向上するように努力する、トレーニングしても成長できない時は工夫する、プラトー(停滞)の状態を乗り切って先に行く。どんなチャンピオンでも、やるべきことの要素は同じです。