近年、大学入試の英語が、かなり難化していることをご存じだろうか。
今年、大学入試を受験した生徒が回答する英語の問題と、その保護者世代(40代~50代)が30~40年前に受験したときの問題では、読むべき英語の分量も、語彙の難易度も、格段にあがっており、保護者世代が受験生だったときの実力では、現代の大学入試英語を乗り切ることは困難になっている。ゆとり教育や少子化の影響から、大学入試は易しくなったといわれることも多いが、少なくとも英語に関しては、現状は逆である。一方で、公立中高の学校教育で使われる英語の教科書はほとんど進化していない。
過去から現在に至る難関大学入試の英語の問題を「テキストマイニング」という手法を用いて、客観的に解析してきた英語塾経営者・斉藤淳氏が、大学入試の難化と学校教育とのギャップについて、警鐘を鳴らす。

約40年前の共通一次と今年の共通テストでは、単語数が3倍増!

親世代の常識は通用しない!<br />大学受験の英語は<br />「超難化」している!図1:共通一次試験(1979年)と共通テスト(2022年)の分量比較 ピンク:リスニング読上台本 緑:同印刷配布 白:筆記試験

 国立大学一次試験として1979年に始まった共通一次試験は、1990年にセンター試験と改称され、私立大学も参加する形となった。さらに2021年には「共通テスト」との改称がなされた。こうした看板の掛け替えはともかく、国公立大学の一次試験は、ここ40年で着実に難化してきている。

 たとえば、分かりやすく、1979年の「共通一次試験」と、今年(2022年)の「共通テスト」の英語の筆記問題を、時間あたりの語数で比べてみよう。

 1979年の「共通一次試験」は、1分間あたり23.5語だったのに比べて、今年の「共通テスト」は73.1語。およそ3.1倍の語数を処理しなければならなくなっているのだ。さらに、これに加えて2005年より、リスニング試験が加わっている。

 ちなみに、1979年と今年2022年の共通テストの問題を、共に同じフォントサイズ・行間で表記して、分量の違いを視覚的に比較したものが、冒頭の図1である。リスニング問題に加え、筆記試験の分量自体が大きく増大していることが、一目瞭然だろう。

 1979年の共通一次では、100分間で2354の英単語を処理するスピードが要求されたものが、2002年の共通テストでは80分間で5850語である。単純計算でも3.1倍の処理速度だが、近年の試験では単語数としてはカウントしていない図表も多く登場し、処理しなければならない情報量は、実感として3.1倍を大きく上回るとも言える。なお、出題された「語彙」についても、決して易しくなっているわけではなく、徐々に難しくなっている。

 さらに2005年から導入されたリスニング試験は、解答時間は60分で、30分の読み上げ時間がある。1分あたり58語の英語を聴き取りながら、同時に1分あたり23.9語を読んで処理せねばならない。これは英語のリスニング指導を、かなり手厚く受けた生徒でないと、難しいのではないだろうか。