シベリア上空通過は最短ルート
ANAとJALは「自主的」に見直し
ウクライナ情勢の影響で、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が欧州便の欠航や減便、飛行ルートの変更に踏み切った。詳細は後述するが、安全面を考慮した両社の「自主的」な判断によるものだ。
一方、日本の航空会社がロシア・シベリア上空を通過するのを、「正式」に禁じられる日は、近いかもしれない。
2月28日、ロシアは欧州の航空会社に対してシベリア上空通過を禁止した。先んじてEU(欧州連合)が、ロシアの航空機に対して、EU領空の飛行を禁止したことへの対抗措置である。
日本の航空会社はまだその対象外だが、EUの駐日大使は日本に対して、EUと同様の措置を検討するよう求めている。これに応じれば、日本の航空会社もロシアからシベリア上空通過を禁止されることになるだろう。
そもそも戦闘中の国の上空を通過することは、安全面で大きな不安がある。実際、2014年7月にはウクライナ東部上空で、マレーシア航空機が誤って撃墜され、乗客乗員合わせて298人が全員死亡するという大惨事が起きた。こうした前例があるため、ANAもJALも自主的に運航体制を見直したのだ。
日本から欧州へ行くのに、シベリア上空を通過するのは最短ルートだ。このルートは旅客にとっても航空会社にとっても利便性が高い。
次ページ以降では、このルートが成立した歴史や背景を解説する。また、このルートが長期に使えなくなった場合の影響と対策についても考察してみたい。