一般常識を突き詰めて考えてみる
「何が正しいのか定義を見直す」とはどういうことかを見ていきましょう。
ここで、あなたに質問です。一般に「円高になると日本の景気は悪化する」と言われます。これはなぜでしょうか?
一般には、円高になると日本の輸出企業の業績が悪くなるため、景気は当然悪化すると考えられています。
ここでまず考えたいのは、「日本の景気」って何だろう、ということです。これはもちろん定義の仕方によるわけですが、景気動向をはかる指標としてはやはりGDP(国内総生産)を見るのがよいでしょう。
そこで日本のGDPの内訳を見てみましょう(グラフ参照、2020年度)【図1】
すると、日本のGDPの53・6%は民間消費支出(個人消費)が占めているとわかります。
次いで多いのは政府消費支出(21・2%)で、企業設備(15・8%)、公的固定資本形成(公共投資)(5・8%)と続きます。実は、純輸出(輸出−輸入)はほぼ0%(−0・1%)です。
円高になれば輸出企業は当然苦しみますが、逆に輸入企業には追い風となります。そしてデータを見る限り、それを差し引きすればほぼゼロです。過去のデータを見てもほぼ同じ傾向といえます。
つまり、円高になっても輸出入が景気全体に及ぼす影響はほぼゼロのはずだということです。
しかも、日本は食品などの多くを輸入に頼っており、私たちの身の回りは海外からの輸入品で溢れています。
つまり円高になるということは、これらが買いやすくなることを意味します。ガソリンも値下がりするでしょう。
このように考えると、円高になったとき、GDPの53・6%を占める個人消費が大きく落ち込むのは考えにくいように思います。
では、なぜ新聞などのメディアでは「円高=景気悪化」と伝えるのでしょうか?
大切なのは、このことについて「どうしてだろう」と考えることです。
おそらく日本人が100人いれば、うち99人は「円高になると日本の景気は悪化する」に疑問を挟まないと思います。しかしその理屈は実は成立していないのです。
「円高になると景気が悪化して株価が下がる」はどうでしょうか。よく「株式市場は景気の先行指標」と言われ、一般には6カ月〜12カ月先行するとされています。景気が良ければ株価が上がり、景気が悪化すれば株価が下がるのは当たり前だと思われています。
果たして、本当でしょうか?