ダイエット、禁煙、節約、勉強──。何度も挑戦し、そのたびに挫折し、自分はなんて意志が弱いのだろうと自信をなくした経験はないだろうか?
目標を達成するには、「良い習慣」が不可欠だ。そして多くの人は、習慣を身につけるのに必要なのは「意志の力」だと勘違いしている。だが、科学で裏付けされた行動をすれば、習慣が最短で手に入り、やめたい悪習も断ち切ることができる。
その方法を説いた、アダム・グラント、ロバート・チャルディーニら一流の研究者が絶賛する1冊、『やり抜く自分に変わる超習慣力 悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』(ウェンディ・ウッド著、花塚恵訳)より一部を公開する。
創作も習慣力で花開く
繰り返すことで長続きする習慣になるのは、ある意味うなずける。だがアーティストの創作といった、曖昧で定義が難しい活動についてはどうか? それらも習慣として継続できるようになることで、メリットが生まれるのか?
これについては、大規模なコメディの祭典として知られる「スケッチフェスト」に出演したプロのコメディアン45人を対象に、意義深い実験が行われている。それは、用意された設定のオチを、4分間にできるだけ多く各自に創作させるというものだった。
たとえば、「ステージ上にいる4人が大笑いするなか、そのうちの2人がハイタッチしたとたんに全員が笑うのをやめた。そこで誰かが〇〇と言う」の「〇〇」を答えるという具合だ。
コメディアンたちは、4分で6つ前後の面白いオチを考え出した。その後、もう4分あったらさらにいくつのオチがつくれるかと彼らに尋ねた。すると彼らの意識的な自己は、生み出せる数は減ると想定した。回答の平均は5つほどで、最初の4分で生み出した数よりも少ない。
その後、実際にさらに4分かけてオチを創作してもらった。そうして実際に生み出された新たなオチの数は、彼らの想定より20パーセント多かった。彼らは継続の力を甘く見ていたのだ。
創造的な作業を継続して行う習慣が身につけば、その作業に没頭し、自分が思う以上のアイデアを生み出すことができる。コメディアンたちの想定や欲求は関係ない。悲観的な予想を立てても、やり抜く習慣がしっかりと定着していれば、アイデアを生み出す努力を続け、見事に生み出すのだ。
これと同じパターンは、別の創造的なタスクを課した実験でも確認できた。こちらの対象は大学生で、先ほどのコメディアンたちのように策を考案するタスクを課して数分間取り組ませ、その後同じタスクにさらに数分取り組み続けた場合の生産性を予測させた。大学生たちもやはり、継続がもたらすメリットを甘く見積もった。続けたところで成果は減ると予想したのだ。
だが、やり続ける指示を与えると、学生が予想した以上の数の策を生み出したばかりか、最初のときより工夫が凝らされていた。第三者機関に評価してもらうと、最初に考案された策より、あとから考案された策のほうが質が高いと判断された。継続は人を消耗させないと実証されたのだ。
続ければ、成果は生まれ続ける。長く続ければ消耗するとの誤解が生まれるのはしかたのないことだ。実行制御を使い続ければ、時間がたつにつれて消耗する。自分の行動を管理したり、決断を下したりしていると、人はしだいに考えることにうんざりしてくる。注意は散漫になり、モチベーションも低下する。だが、継続が鎮座する習慣的な自己は、まったく違うものでできている。だから、こちらを活用すればいい。
【本記事は『やり抜く自分に変わる超習慣力 悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』(ウェンディ・ウッド著、花塚恵訳)を抜粋、編集して掲載しています】