「職場で心が折れやすい人」と「失敗しても回復が早い人」の決定的な差
『伝わるチカラ』著者・井上貴博 TBSアナウンサー インタビュー
「自己肯定感が高くないと幸せになれない」という思い込み
──「嫌われたくない」という気持ちが強いからこそ、好感度を気にしてしまい、心を病んでしまう……。という人も多いんじゃないかと思います。井上さんは、そういう葛藤はありませんでしたか?
井上:そりゃあ、もちろんありましたよ(笑)。毎年、年末に発表される「好きな男性アナウンサーランキング」というものがあって、入社以来、私は無縁で過ごしてきましたが、ずっとランクインしたいという気持ちは正直ありました。
だからといって好感度を得ようとすると、優人生的な発言に終始しがちです。角が立たない、ミスがないけれどつまらない、何も印象に残らない……それこそ「引っかからない」アナウンサーになってしまうでしょう。
・好かれたい × 好かれようと行動する = つまらない人になる
この公式から抜け出すには、ときには自分から嫌われにいく覚悟も必要だと思うんです。
──嫌われる覚悟を持てなくて、苦しんでいる人は多そうですね。
井上:もしかしたら、心が折れやすい人というのは、そういう「メンタルの強さ」とか、最近よく耳にする「自己肯定感」とかを気にしすぎなんじゃないかとも思うんです。
──言われてみると、たしかに「メンタルが強くないと幸せになれない」「自己肯定感が高くないと幸せになれない」と思い込んでいるのかもしれません。
井上:どうしたら幸せになれるかなんて人それぞれで、正解はないじゃないですか。なのに、人間って弱いから、世間で言われている「正解」というものに依存したいのかもしれません。でも、正解を求めるから苦しくなるんですよ。幸せの定義なんて自分で決めるべきで、人にとやかく言われるものじゃない。
自己肯定感なんて、ないですよ。そんなに簡単に自分を肯定できるわけがない。私だって、自分のことが嫌いだし、自信もないし、コンプレックスだらけです。でも、だからこそ自己鍛錬するし、成長もできる。私は「自分が幸せかどうか」を気にするよりも、そういうかっこいい生き方がしたいなあ、と思うんですよね。
【次回に続く】
セールストークやプレゼン、交渉などがうまくいかない、
自分の想いが伝わらない……あなたへ
この本は「好きな男性アナウンサーランキング」トップ10入り、報道番組『Nスタ』平日版の総合司会として活躍、人気・実力を兼ね備え、いまや“TBSの夕方の顔”ともいえる井上貴博アナウンサーが、15年間にわたりアナウンサーとして艱難辛苦を乗り越えながら培った「伝わるチカラ」を初公開した渾身の作です。仕事でもプライベートでも、自分の言いたいことが「伝わらない」を「伝わる」にかえたい、すべての人に向けて圧倒的な熱量を注いだ本です。
アナウンサーは「なぜ、こんなにもスムーズに話せるのか?」「もともと話が上手いんだろう」「話す才能があるのだろう」と多くの人は思うでしょう。でも、違います。井上アナは、そもそもアナウンサーを1ミリも目指したことがなく、プライベートでは聞き役に回ることの多い性格。しかも「地味で華がない」とよく言われるほど、派手さもない。そんな井上アナが、どうやってテレビ・ラジオの第一線で勝負できるほどの「伝わるチカラ」を持てるようになったのか? じつは誰でもできるのに意外とやっていない「地味で華がない井上アナが実践した52のこと」を興味深いエピソードとともに1冊にまとめました。たとえば――
◎最初の3秒間に全力を注ぐ
⇛ 前傾姿勢と相づちが話し手を饒舌にする
◎「句点(。)をたくさんつけながら話す
⇛ 一文を短くしてダラダラ話し続けないようにする
◎おばあちゃんに話すようにゆっくり話す
⇛ 自分が思う以上に話すペースはゆっくりでいい
◎「うまく話そう」と思わなくていい
⇛ 話すときは毎回、実験のつもりでとり組む
◎プレゼンでは原稿を読んでもOK
⇛ 大事なデータは、むしろ読み上げたほうがいい
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著者・井上貴博TBSアナウンサーからあなたへ
この本では、私の経験のなかから、「伝わる」ということについて語っています。何しろ私自身が成長途上にありますから、伝わる話し方の正解ではありません。強いて言えば、私が公開するのは「伝わる」にかかわる現時点での答案用紙です。
そもそも同じようなテーマで、たくさんの人がさまざまな角度から語っているということこそ、正解が1つもないことの証拠です。ですから、くれぐれも正解を期待しないでください。
また、意図を曖昧にせず、明確にしたいとの想いから、あえて断定口調、言い切りで綴っています。ところどころ生意気な印象を持たれるかもしれませんが、すべては私自身が“できない自分”に向けて言い聞かせながら書いたものであり、「本当はこうありたい」という願望の表れでもあります。
単純に読み物として楽しんでいただき、「こんなヘンなアナウンサーがいるんだ」「アナウンサーが必死で背伸びをしている」などと笑ってもらえれば嬉しいです。
井上 貴博
(いのうえ・たかひろ)
TBSアナウンサー
1984年東京生まれ。慶應義塾幼稚舎、慶應義塾高校を経て、慶應義塾大学経済学部に進学。2007年TBSテレビに入社。以来、情報・報道番組を中心に担当。2010年1月より『みのもんたの朝ズバッ!』でニュース・取材キャスターを務め、みのもんた氏の不在時には総合司会を代行。2013年11月、『朝ズバッ!』リニューアルおよび、初代総合司会を務めたみのもんた氏が降板したことにともない、2代目総合司会に就任。2017年4月から『Nスタ』平日版の総合司会。2022年4月、自身初の冠ラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』スタート、第30回橋田賞受賞。同年5月、初の著書『伝わるチカラ』を刊行。
【本書の目次】
序 章 大切なのは「伝える」より「伝わる」こと
■「伝わる」ための努力をしていますか?
■先輩をライバルに「伝わるチカラ」をのばす
■アナウンサーになる気はなかった
■自分にしかない武器で勝負する
■「この写真を見て30秒話してください」
■「30秒間、日本の名所でしりとりをしてください」
■敵が多そうなテレビ業界で成長につなげる
■苦渋の決断で成長の道を切り拓く
■29歳の大きなチャレンジ
■模範的アナウンサーの逆を行く
■精神的にどん底の状態を経験
第1章 「伝わらない」が「伝わる」に変わる8つのテクニック
①句点(。)をたくさんつけながら話す
――一文を短くしてダラダラ話し続けないようにする
②カタカナ語を使ったら日本語を添える
──横文字を使いすぎると情報が伝わりにくくなる
③噛むこともテクニックのうち
──間違いを気にするより積極的に発言することが大事
④おばあちゃんに話すようにゆっくり話す
──自分が思う以上に話すペースはゆっくりでいい
⑤伝えたい情報は1つに絞る
──あれこれ伝えようとしても逆効果、1つを丁寧に伝える
⑥「ものすごく」「めちゃくちゃ」など過剰な修飾語は省く
──修飾語を使うなら「ここぞ」というときに限定する
⑦身近なモノと比べてイメージをふくらませる
──1つだけでなく2つ3つと比べれば笑いも誘う
⑧「うまく話そう」と思わなくていい
──話すときは毎回、実験のつもりでとり組んでみよう
Column1
RPGの主人公になったつもりでチャレンジする
第2章 「信頼感」が高まる8つの考え方
⑨当たり前のように使いがちな言葉を疑ってみる
──自分がしゃべることを客観視するクセをつける
⑩あおり文句より正直に伝えることが一番
──誇張表現でひきつけようとしても不信感を招くだけ
⑪客観的な数字に基づいて話す
──根拠のない印象操作をしない
⑫「説明」という言葉を使わない
──上から目線になりそうな言葉に注意する
⑬「ね」より「よ + 質問」で会話を膨らます
──同意を求めるだけでなく、ときには言い切る覚悟も必要
⑭プレゼンでは原稿を読んでもOK
──大事なデータは、むしろ読み上げたほうがいい
⑮原稿にペンを入れておく
──その後、下読みをしないトライアルをしてみる
⑯初対面の人のことは事前に調べておく
──調べると相手のことを好きになれる
⑰最初の3秒間に全力を注ぐ
──前傾姿勢と相づちが話し手を饒舌にする
Column2
好感度は気になってもスタイルを崩さない
第3章 「自分の意見」をはっきりさせる7つの話し方
⑱自分を主語にして話す
──他人事にせず、当事者意識を持つことが大切
⑲自分の意見をシンプルに言い切ることをためらわない
──わからないことはごまかさずに認める
⑳自分の責任で思ったことを話す
──空気をうかがいながら話さないようにする
㉑「意見」と「本音」の違いを知る
──本音を求めるとコミュニケーションがギスギスしがち
㉒あえて逆の立場から反対意見を考えてみる
──「本当にそうなのかな?」と疑いの目を向けよう
㉓批判するなら「こうしたほうがいい」を出す
──批判ばかりしていると議論が進まなくなる
㉔自分ができないことは人に求めない
──批判する前に「自分はどうなのか」を問う
Column3
厳しい意見を自分の成長につなげる
第4章 「伝わる人」になる8つの自己演出法
㉕リアクションは中途半端でなく大きな動作がいい
──体を大きく使って喜怒哀楽を伝える
㉖堂々としなくてもいい
──トチったりアワアワしたほうが共感を得られやすい
㉗自分をアピールしすぎない
──「自分はどんな人と一緒に働きたいか」を想像してみる
㉘見た目の印象と違う発言で意外性を演出する
──先入観を逆手にとってギャップを効かせる
㉙笑いにこだわりすぎない
──一生懸命な姿勢のほうが聞き手の心を揺さぶる
㉚目的に沿って服装を変えてみる
――他の人と違う見た目で自己演出する
㉛資料は文字よりも写真やイラストを重視する
──資料を見せるタイミング一つで受ける印象が変わる
㉜極力テンションの上げ下げがない生活を送る
──淡々とした生活が安定のアウトプットに通じる
Column4
嫌われる覚悟を持とう
第5章 「伝わるチカラ」が高まる10のインプット法
㉝「反省」が語彙力や表現力を高める
──1日の終わりに自分の発言を振り返る時間をつくろう
㉞スマホの「類語辞典」で芋づる式に語彙が増える
──とにかくたくさんの言葉を目にする習慣をつけておく
㉟「自分だったらどう言うか」を考える
──実際に使えそうな言葉を貪欲に探そう
㊱仕入れた言葉はとにかく使ってみる
──コツコツとメモするより発音しよう
㊲若い人に最新情報を教えてもらう
――あえてのミーハー根性で流行には積極的に食いつく
㊳言葉づかいを指摘されたらラッキーに思う
──正しい言葉づかいを教えてもらうのは本当に貴重
㊴自分とは違う価値観の人に触れる
──異業種の人との交流は自分を知る大チャンス
㊵中性的な言葉づかいを織り交ぜる
──語尾をやわらかくすると話を聞いてもらいやすい
㊶スピーチは事前の情報収集に全力を注ぐ
──上手なスピーチより攻めの姿勢が評価される
㊷お手本になる人の真似をする
──身体に染み込むくらいじっくり観察する
㊸自分にとってのロールモデルを持つ
──「この人のようになりたい」という目標があると頑張りやすい
Column5
自分より実力のある人と戦って勝つことを目指そう
第6章 人間関係がうまくいく9つの「伝わる技術」
㊹“タメ語チャレンジ”で先輩との距離を詰めてみる
──先輩には少し生意気なくらいの態度が効果的
㊺年下から突っ込まれるスキをつくる
──日頃の努力が「人から話しかけられやすい雰囲気」につながる
㊻自分より若い人に教えを乞う
──若い力を活用したいなら、まず話しやすい環境をつくる
㊼「下手マウンティング」はほどほどに
──過剰にへりくだりすぎると、人との距離感ができてしまう
㊽「~させていただく」を使いすぎない
──へりくだらないほうが人間関係はうまくいく
㊾フィードバックはポジティブなことから入る
──「相手がどう受け止めるか」を踏まえて最適な言い方を探ろう
㊿ちょうどいい緊張感を持つ
──ときにはチーム内での対立をいとわない
51 職場の仲間と遠慮なくぶつかってみる
――ぶつかった先にコミュニケーションが定まる
52「MCになったつもり」で人の話を聞く
──話が苦手な人は聞くスキルを高めることが肝心
Column6
やりたい仕事があれば、きちんと意思表示をする
終 章 失敗は何よりの財産、恥をかけることは幸せ
■失敗して傷ついてこそ成長する
──傷つくチャンスを与えられているだけでも恵まれている証拠
■恥をかかないと成長はない
──「恥をかけるチャンスは今のうち」と考えよう
■間違いなく「言われているうちが花」
──批判の言葉は周囲からの期待の裏返しである
■悔しさを仕事の推進力に換える
──偏見に対しては結果を出して黙らせるしかない
■業界や会社全体を俯瞰して考えてみる
──自分の立場を俯瞰すると大胆な発言ができる
■制約があるからこそ、“攻め”やすい
──会社には少しくらい不満を持っていたほうがいい
■難しそうな仕事こそ積極的に挑む
──得意な仕事ばかりしていると「できる仕事」は減っていく
おわりに