一貫したストーリーを見せよう
経営陣によるビジョンの提示とセットで必要なのが、ESG/SDGs経営の取り組みが最終的に顧客価値の実現につながる一貫したストーリーの展開でしょう。
端的にいえば、ビジョンを提示するだけでなく、それをどのように実現するのかを具体的に説明し、消費者や投資家など幅広いステークホルダーに納得してもらう必要があります。
たとえば、テスラでは、イーロン・マスク氏によるツイッターを活用した直接的なコミュニケーションだけではありません。同社が目指す「地球規模の気候変動問題の解決」を実現するため、再生可能エネルギーをベースにした持続的なエネルギーエコシステムを作るためのマスタープランを2回(2006年/2016年)発表し、今でも一般公開されています。
また、ユニリーバもポール・ポルマン氏のCEO就任時に、ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランと呼ばれる計画を発表し、サステナブルな原料調達や温室効果ガスの排出削減、世界の最貧層の生活向上などに向けた具体的な実行プランを発表しています。
このようなプランは通常KPIとセットであり、毎期達成状況の報告を求められるため、その達成へのコミットなしにはやすやすと発表できるものではありません。
また、このような取り組みがどのように企業価値の創造、事業成長につながるかまでを含めてストーリーを提示する必要があります。
ストーリーに必要な要素としては、
a.自社が解決を目指す社会課題(サステナビリティ観点)は何なのか
b.その社会課題を自社のリソースを使って(もしくは仲間を募って)どのように解決するのか
c.その社会課題の解決が顧客価値の創造、最終的に収益向上を通じてどのように企業価値の向上につながっていくのか
の3つが重要です。
これは必然的に自社内の経営資源の組み換えが発生するため、ボトムアップのアプローチでは限界があり、まして一部のサステナビリティ担当部署の取り組みだけでは、早晩限界が訪れることでしょう。
経営陣自らが結果責任を持って、すべてのステークホルダーに説明する必要があります。これは、いわずもがな、ESG/SDGs経営に限らず、企業経営すべてに当てはまる経営者の基本的な役割といえるでしょう。