顧客参加を促そう
最後に必要なのは顧客参加の視点です。ESG/SDGs経営の取り組みは、最終的に顧客にその価値を認識してもらい、商品購入を通じて利益に転換する必要があります。
なかなかハードルの高い作業に見えますが、前述したテスラやインポッシブルフーズ、パタゴニアは、対象企業の製品自体が圧倒的な競争力を持つだけではなく、製品購入を通じてどのように地球環境に対する負荷を下げるのか、消費者にとってその道筋が明確となっています。
サファリコムの事例なども、M-Pesaへの参加がダイレクトにユーザーにとってメリットがあるだけでなく、サービスへの参加を通じてその決済プラットフォーム全体の価値が上がる(経営学用語では「ネットワーク外部性」と呼びます)ことによる、社会全体の価値創造へのプロセスが明確です。
そのような意味では、経営者によるESG/SDGs経営実現に向けたビジョン/ストーリーの最終的なゴールは、顧客にそのビジョンに共感してもらい、購買行動につなげ、利益を創出することにおくべきでしょう。
単なるCSRの延長として考えると、追加的なコスト項目として競争力を失う形で捉えがちですが、サステナビリティの取り組みは顧客ニーズの解決を通じた、最終的な顧客参加と利益創出がボトムラインであることを忘れてはならないのです。
現在の自社のESG/SDGs経営への取り組みが経営者自ら、一貫したストーリーを持って、顧客参加を促す形でリーダーシップを発揮できるようになっているか、あらためて確認していきましょう。
※本記事は『SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略』より本文の一部を抜粋、再編集しています。