「ナレッジの共有化」ができれば、どんな営業組織も生産性が倍増する

「これこそ、新しい営業の教科書だ!」と発売当初から話題になっている『NEW SALES』。これまでの営業本と大きく異なるのは、著者の麻野耕司さん自身は決して「営業の天才ではない」ということ。自身の体験を「キャラクターありき」で語っていない。麻野さんは自分のことを「営業の天才ではなく、ナレッジの共有化のスペシャリスト」と位置づけます。今、日本の組織に必要なのはナレッジを共有化し、再現性のある仕事環境にすること。『NEW SALES』とは、突き詰めれば「営業という領域でナレッジの共有化を実現する」一冊。
売れる営業と売れない営業は何が違うのか。売れる営業組織と売れない営業組織は何が違うのか。徹底した調査と分析によって、営業組織はどんなナレッジを、どんなふうに共有していけばいいのか。今回のインタビューでは、その真髄を麻野さんに詳しく聞いた。(取材・構成/イイダテツヤ)

営業に大切なのは
センスや才能よりも技術

――『NEW SALES』で麻野さんは「営業は高度化、複雑化して、格差が進んでいる」と語っています。すると、営業という仕事で成果を上げるには才能やセンスが必要になってきているようにも感じるのですが、麻野さんはどう考えていますか。

麻野耕司(以下、麻野):営業という仕事がどんどん高度化、複雑化していて「簡単に、すぐに誰でもできる仕事」でなくなってきているのは確かです。「営業」と聞くと、「資料を読んで商品知識を入れれば、誰でもできる」「行動量がすべて」みたいに思われているところが依然としてありますが、それは違うと思います。

ただし、私は「才能がないとできない」とは思っていなくて、むしろ「営業は才能ではなく、技術でやるもの」だと考えています。

『NEW SALES』の一番のコアとなっているのは「再現性」です。たしかに、営業は高度になっている。でも、そんな高度な営業という仕事でも再現性を持って実現することができる。『NEW SALES』とはそういう本だと思っています。

――「高度な仕事だけれど、才能ではなく、技術として再現性を持って実現できる」って素晴らしいですね。ビジネス書、実用書が目指しているもっとも大切な要素のような気がします。

麻野:もともと私は「物事を再現性のある形にする」とか「ナレッジ化する」のが大好きなんです。前職では「モチベーション」という領域のコンサルティングをしていたんですが、モチベーションなんてすごく曖昧なものじゃないですか。そんな曖昧なものでも、再現性を持って実現できるようなフレームワークを作ってきました。

それで今回は「セールス」という領域が、多くの個人や組織にとって非常に大きな課題を持っていることがわかってきた。それなら分析して、ナレッジにして世の中に届けてみよう。そんな流れで生まれたのが『NEW SALES』という本なんです。

私は別に営業の天才ではありません。この本にも、私個人の体験談はほとんど書かれていません。世の中にある営業本って、たいていは著者自身がものすごい成果を残したトップ営業パーソンで、自身の体験談ばかり書いてあるんです。もちろん、そういう本にも価値はあるんですが、私の書いた『NEW SALES』はまったく違って、世の中の「売れる営業担当と売れない営業担当」「売れる営業組織と売れない営業組織」を客観的に研究して、解明しているんです。

それだけに、原稿をまとめるまでにめちゃくちゃ時間がかかってしまったんですけど(笑)

――『NEW SALES』に書いてあることは、別に麻野さんとか、トップ営業担当の人のような才能やキャラクターがなくても再現できるということなんですね。

麻野:まさにその通りです。トップ営業の方の書いた本の場合、その人の「キャラクターありき」みたいなところもけっこうありますよね。でも、『NEW SALES』には「私じゃなきゃできないこと」はひとつも書いていません。