冒険とは、生きて帰ることである――。こう話したのは、冒険家の植村直己さん。世界最高峰のエベレストに日本人として初登頂(1970年)、犬ぞり単独行として世界初の北極点到達(1978年)など、数々の記録を樹立。しかしながら、冬期マッキンリーに世界初となる単独登頂をした後の下山時に、消息不明となった(1984年)。ビジネスの領域で新たな価値を創造するために、あえて自然の中に身を置き、新たな気づきを得ようとする人もいる。しかし自然は、雄大になればなるほど、人間にはコントロールしにくいものである。前回に続き、日本の大自然を活用し、オウンリスクを意識しながら挑むアドベンチャーレース「OMM JAPAN」のイベントディレクター・小峯秀行氏(株式会社ノマディクス取締役)に、「山の総合力」を身に付ける上で欠かせないオウンリスクとチームワークについての考え方を聞いた。(取材・文・撮影/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)
2022年度は
岐阜県の山域「奥美濃」で開催
2014年に日本で初開催されたOMM JAPAN。あえて気候条件の厳しい晩秋に開催され、2日分の食料やテントといったアイテムを自分たちで背負い、ナビゲーション力、セルフエマージェンシー力、判断力など、全てのマウンテンスキルを駆使して挑む。そこでは、山岳地を安全かつ正確に行動するための経験、体力、ナビゲーションスキル、野営技術が不可欠。つまりは、「山の総合力」が求められるのだ。
ゴールまでの道筋は、2人1組のバディと共に決める。自分たちの置かれた状況を把握し、技術・体力と相談しながら最適なルートを探る。レースを辞めるのも選択肢となる。