味の素の社長人事を読み解くと、トップに欠かせない“出世2条件”が浮かぶ。現社長の藤江太郎氏は2022年4月に就任したばかりだが、30年ごろの「次期社長」を大胆に予測した。味の素の幹部の中から2条件に当てはまる人材を探ると、ある有力候補が浮上した。特集『味の素 絶好調下の焦燥』(全7回)の#2では、出世の条件と次期社長レースの行方を追った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
藤江氏と最後まで社長を争った倉島専務
社内のひそかな話題は早くも「次の社長人事」
「藤江さんは倉島さんと社長の座を争い、最後に勝ったんだ」。ある味の素関係者は、社長レースの舞台裏についてこう明かす。
味の素の社長が7年ぶりに交代した。西井孝明前社長の後任として、4月に新社長に就任したのは専務を務めていた藤江太郎氏だった。
「正直、藤江さんは常務で“上がり”だと思っていた。2021年4月に食品事業本部長に就任し、同6月に専務に昇格したときに、『ひょっとして』と思った」と、別の味の素関係者は振り返る。
一方、社長の座に届かなかった倉島薫氏は藤江氏の前任の食品事業本部長で、21年6月に取締役兼専務に昇格していた。
社長争いの結果か、22年4月に始まった藤江新体制の執行役に、倉島氏の名前はなかった。倉島氏は6月の株主総会をもって取締役を退き、味の素を去った。
倉島氏と同時に取締役を退任した、西井前社長、伊藤雅俊前会長、福士博司前副社長は「特別顧問」として今後も味の素に関わり続ける。倉島氏にこの肩書が与えられることはなく、社長を争った2人の食品事業本部長の明暗は分かれた。
“保守的”な社風が残る味の素では、社長人事が決まって早々、ひそかに話題になるのが、「次の社長人事」だ。
味の素の社長の任期は、西井前社長が7年(15~22年)、伊藤元社長が6年(09~15年)、山口範雄元社長が4年(05~09年)と期間の慣例はなく、ばらつきがある。
社長交代がいつになるかは定かでないが、「次の社長レース」の号砲は早くも鳴っている。遅くとも「2030年」には、藤江氏の後任となる新社長が誕生しているだろう。
味の素の社長へと上り詰めるには、何が必要になるのか。過去の社長人事の傾向を見て関係者への取材を進めると、“出世2条件”が浮かび上がる。
次ページ以降では、出世2条件を基に、2030年の次期社長人事を先読みした。2条件を満たす「有力候補の実名」も明かす。