かつての味の素は「グローバル食品メーカートップ10」を目指してひた走ってきた。しかし、藤江太郎社長は、「売り上げを伸ばすための過度な投資はコントロールしていく」と明言し、従来路線には否定的だ。4月に就任した藤江社長が、自らの「経営者としての務め」を力説した。特集『味の素 絶好調下の焦燥』(全7回)の最終回では、藤江社長が経営者としての“決意”を語り尽くした。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)
食品とアミノサイエンスの利益を1:1に
追い風が吹く市場に「事業をシフト」
――味の素が2030年に目指す姿として、食品とアミノサイエンス(非食品)の事業利益の比率を半分ずつにするとの目標を掲げました。
利益の内訳は食品が8割、アミノサイエンスが2割という状態が長く続いていました。現在は医薬品製造受託や、電子材料などのアミノサイエンスが伸びているということもあり、食品が3分の2、アミノサイエンスが3分の1の比率となっています。
すでに芽生えているものや、今まいている種を見ると、アミノサイエンスは年平均成長率で2桁パーセント以上の成長をしてくるでしょう。こうしたことを踏まえて30年の姿を想定すると、食品とアミノサイエンスが大体半分ずつになる。生活者の皆さんには、より面白い価値を提供できる会社になると思っています。
――裏を返せば、これから食品は伸びないという危機感があるのでしょうか。
食品についても、11年からの10年間で(年平均成長率で)5%程度伸びていますが、アミノサイエンスの方がより伸びていくということです。追い風が吹く市場に事業を計画的にシフトしていく。これは、「経営者の務め」だと思っています。
食品は今後も(年平均成長率で)5%程度伸ばしていきますが、伸びる分野と厳しい分野がある。伸びていく海外調味料分野などに、人もお金もシフトさせていきます。
インタビューで、「売り上げを伸ばすための過度な投資はコントロールしていく」と明言し、売上高の拡大路線に否定的なスタンスを明かした藤江社長。一体何にプライオリティーを置いているのか。次ページでは、自身の後継候補に不可欠な「味の素の経営層に必要な要素」など藤江社長の本音を明かしてもらった。