資産の保有を抑え財務を軽くする「アセットライト経営」。味の素の取り組みには、“優等生”との評判も少なくない。事業売却、工場閉鎖、政策保有株放出……。一連の取り組みでアセットライト経営は完成目前だが、“最後の試練”が待ち構える。特集『味の素 絶好調下の焦燥』(全7回)の#4では、「アセットライト優等生」に迫る、最後の試練についてつまびらかにしていく。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
ROIC重視で進める「資産を持たない経営」
2000億円「資産圧縮」の目標が達成目前
食品メーカーの数少ない“勝ち組”である味の素。競争力を高めるために注力しているのが、資産の保有を抑えて財務を軽くする「アセットライト経営」だ。
味の素は2020~25年度の中期経営計画で、投下資本利益率(ROIC)を重視指標と位置付けた。21年度に7.9%だったROICを、25年度には10~11%に高める目標を掲げる。
ROICは、「税引き後営業利益」を、自己資本と有利子負債を合わせた「投下資本」で割ることで算出される。不採算事業や資産の売却などの資産圧縮(アセットライト)によって、分母が小さくなり、ROICの向上につながるというわけだ。
「アセットライトは残り500億円プラスアルファを計画しているが、私としてはなるべく、25年を待たずに前倒しして行っていこうと考えている」
味の素の藤江太郎社長は、資産圧縮の今後の見通しについて、言葉滑らかにそう語る。
藤江社長の発言が示すように、ROIC向上の進捗は想定以上だ。19~25年度で「計2000億円のアセットライト」を目標に掲げたのだが、19~21年度で既に1960億円を実行しており、完成目前だ。
味の素の実績は業界でも注目されており、「アセットライトの優等生」ともっぱらの評判だ。しかし、中期経営計画の前倒し達成を目前に控え、“最後の試練”が待ち受ける。それは、前経営陣が残していった「負の遺産」でもある。
次ページ以降では、「アセットライト優等生」に迫る、最後の試練についてつまびらかにしていく。