今回は、【集中力が高まる・パフォーマンスが上がる】朝のベスト習慣についてお伝えします。
レコード会社の社員時代はプロデューサーとして、ミリオンヒットを10回記録するなどトレンドを牽引し、絶調期にニュージーランドに移住。その後、12年かけてリモートワーク術を構築してきた四角大輔氏。彼のベストセラー『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』は、次世代のミニマリストのバイブルにもなった。
この連載では、四角氏のあたらしい著書『超ミニマル主義』の中から、「仕事術」「ワークスペース」「働き方」「スケジュールとタスク」「デバイスと情報」「思考と習慣」……etc を「手放し、効率化し、超集中する」ための【全技法】を紹介していきます。

【集中力が高まる】朝のベスト習慣とは?Photo: Adobe Stock

新しい1日をスタートするために必要な、
「身を整えるルーティン」という神聖な行為

 起きてから家を出るまでの間に、心を落ち着かせるひとときを確保しよう。

 筆者は、その豊かな時間を“朝のセルフケアタイム”と位置付け、夕方のセルフケアタイムと同じく大切にしてきた。この1日2回の「小さなバカンス」で睡眠をはさむことで、毎日の脳疲労を完全に消し去ることができる。

 朝のセルフケアタイム
・香りのいいハーブティーやコーヒーを飲む
・朝の光を感じながらゆっくりヨガをする
・冷たい空気を吸いながらウォーキング
・頭に思い浮かぶことを書き出すジャーナリング
・マインドフルネス(簡単な瞑想手法)
―起床後に目を閉じて5分行うだけで、ストレスを軽減できるというエビデンス(※1)もある。ぼくも実践して、明らかな効果を感じている。

身と心を整えるルーティン

「目覚ましにイライラして起き、バタバタ準備して飛び出す。遅延気味の満員電車にハラハラし、走ってギリギリ間に合う」

 こんな朝が習慣化すると、ストレスを抱えての始業が日常となり、午前中の生産性は最低レベルとなる。

 本連載で提唱する、起床から家を出るまでの理想的な過ごし方「セルフケアタイム1時間+朝のルーティン30分=計1時間半」を具体的にイメージしてもらうために、まずは起きてからやるべきことを順に並べてみたい。

「起床→①洗面&トイレ→②朝食→③着替え→④髪と顔のセットアップ→出発」というのが一般的だろう。

 ①③④は、新しい1日のために必要な神聖な行為。こういったシンプルな雑事を、無心で繰り返す日々の習慣こそが、メンタルの安定につながると知っておこう(※2)。

身を整えるルーティンは、
僧侶の夜明けの「祈り」と同じくらい重要だ

 この身を整えるルーティンは、音楽アーティストやアスリートが本番前に行う「繰り返しの所作・決まりごと」や、僧侶の夜明けの「祈り」と同じくらい重要だ。こういった「儀式」こそが、彼らの卓越した精神力の一端を担っているのである。

 そして②朝食も、気持ちいい音楽を聴きながら、大好物をゆっくり食べることで、上質な「セルフケアタイム」へと昇華する。その前後に、ティータイムやヨガ、散歩などを入れることで、セルフケアタイムを1時間ほどに拡張しよう。そんな心地いい時間を過ごせた朝は、爽快な気分で仕事に向かえる。

 時間とは―同じことをやるにしても―マインド次第で「面倒=重い」から「心地いい=軽い」まで、自在に変容する。これは、人生を豊かにする時間ハックとも言える。

在宅勤務で気分をリセットする方法

 コロナ禍以降こんな声をよく耳にするようになった。

「リモートワークが増えて喜んだものの、在宅勤務の日はONとOFFの切り替えが難しい」
「気付いたら家でずっと仕事してて気が休まらない」

 それは、通勤時間が「リセットタイム」として機能していたからだ。そういう人こそ、朝と夕方の「身を整えるルーティン」を活用してほしい。出社前ルーティンと、帰宅後ルーティンを―通勤時間に負けないくらい―有効なリセットタイムとして運用するのだ。

 人というのは、朝に顔と髪型をある程度整え、見られて恥ずかしくない服に着替えるだけで気は引き締まる。夕方、シャワーを浴びて疲れを流し、部屋着に着替えると気はゆるむもの。

「仕事」と「セルフケアタイム」の間の、「身を整えるルーティン」を丁寧に過ごすことでしっかり線を引き、「気分」をリセットできれば大丈夫。

「髭も剃らず、パジャマのままだといい仕事ができない」

 これは、12年以上の在宅/リモート勤務の経験から導き出した筆者なりの解である。人とは「気分の生き物」なのだ。

 人間の気分は、太陽とシンクロした体内ホルモンの関係で、夜はネガティブになり、朝にはポジティブになる。そして、この気分は、脳のパフォーマンスにも大きな影響を与える。

 実際、自分のペースを築けず、夜が不規則になりがちだった20代の頃、情緒不安定なことが多く、仕事でミスばかりしていた。

 だが、朝の時間をイメージ通りに使えるようになってからは、「いい精神状態の自分」をキープできるようになった。そうするうちに、ヒットを量産できるようになっていたのだ。

〈筆者の朝の過ごし方―会社員時代〉
起床

①洗面&トイレ(15分)
②朝食
 ~ティータイム・ヨガ・ウォーキング(65分)
③着替え(5分)
④髪のセット(5分)


出発
<①③④のルーティーンで25分。②のセルフケアで65分。人によって①~④それぞれの時間は違ってくるので、あくまで参考までに>

※1 久賀谷亮『世界のエリートがやっている 最高の休息法』ダイヤモンド社(2016)
※2 吉野聡『習慣の力で普段のリズムを取り戻す「モーニング・ルーティン」の実践法』Adeco Group, Power of Work(2019)

『超ミニマル主義』では、「手放し、効率化し、超集中」するための全技法を紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

(本原稿は、四角大輔著『超ミニマル主義』から一部抜粋したものです)

【集中力が高まる】朝のベスト習慣とは?四角大輔(よすみ・だいすけ)
執筆家・環境保護アンバサダー
1970年、大阪の外れで生まれ、自然児として育つ。91年、獨協大学英語科入学後、バックパッキング登山とバンライフの虜になる。95年、ひどい赤面症のままソニーミュージック入社。社会性も音楽知識もないダメ営業マンから、異端のプロデューサーになり、削ぎ落とす技法でミリオンヒット10回を記録。2010年、すべてをリセットしてニュージーランドに移住し、湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む。年の数ヵ月を移動生活に費やし、65ヵ国を訪れる。19年、約10年ぶりのリセットを敢行。CO2排出を省みて移動生活を中断。会社役員、プロデュース、連載など仕事の大半を手放し、自著の執筆、環境活動に専念する。21年、第一子誕生を受けて、ミニマル仕事術をさらに極め――週3日・午前中だけ働く――育児のための超時短ワークスタイルを実践。著書に、『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)、『人生やらなくていいリスト』(講談社)、『モバイルボヘミアン』(本田直之氏と共著、ライツ社)、『バックパッキング登山入門』(エイ出版社)など。