ラピダスの成長加速に必要な他社との連携強化

 ただ、ラピダスが計画通りに2ナノのロジック半導体を量産し、競争力を発揮できるかは見通しづらい。今後の展開は、官民の協力体制構築にかかっている。組織力を高め、最先端のチップ製造技術の実現に取り組む体制をいち早く整備することが必要だ。

 そのためには、企業の連携強化が欠かせない。例えばラピダスに出資するNTTは、ドコモを買収し、NECと資本業務提携を結んだ。NTTは富士通とも業務提携を交わした。かつての「電電ファミリー」は再結集しつつある。これにより、企業は新しい取り組みを進めやすくなる。

 また、ソニーはホンダと折半出資してEV企業を設立している。ホンダは米GMとの連携も強化している。各社の連携強化を起点にラピダスに出資する企業が増えれば、最先端のロジック半導体の量産に向けた取り組みは勢いづくだろう。

 加えて、ラピダスは最先端ロジック半導体製造に精通するプロ経営者を招き、次世代チップの生産に取り組む文化を醸成することが必要だ。企業の出資を引き出すため、政府による半導体分野の支援策強化も不可欠だろう。

 一方、教訓にすべき事例もある。2012年2月に経営破綻したエルピーダメモリだ。1999年、NECと日立製作所のDRAM事業が統合された。翌年、社名はエルピーダメモリに変わり、2003年には三菱電機のDRAM事業も統合された。組織は一つになったが、出身母体ごとの規格、発想を統一することは難しかった。

 結果として、エルピーダメモリの収益性は上がらず、競争力は低下した。リーマンショック後は公的支援も実施されたが、組織が一つにまとまることは難しかった。最終的に、政府と企業が新しい半導体を生み出すのを放棄したことが、エルピーダメモリの経営破綻の一因になった。

 ラピダスはエルピーダメモリの教訓を生かし、決して二の舞いになってはいけない。次世代ロジック半導体の国内生産を実現できるか、わが国半導体産業が起死回生できるかは、ラピダス自身がいかに組織の集中力を高められるかに懸かっている。