メタバース空間での「セクハラ」も報じられるが…
話題は変わるが、11月21日に「読売新聞オンライン」が「仮想空間『メタバース』でセクハラ横行…臨場感あり『とにかく気持ち悪い』」を掲載した。
この記事は、バーチャルYouTuberらが行ったネット上でのアンケート(回答者876人)のうちの半数以上が「何らかのハラスメントを受けたことがある」と回答したことや、その中に「性的な言葉」をかけられる、「性的に(アバターを)触られる」といった回答が4〜6割程度あったことを紹介していた。
ハラスメントを受けた理由としては「女性型アバターでプレーしているため」と答えた人が半数を超えていた。
しかしこの記事は、取材に答えたバーチャルYouTuberである「バーチャル美少女ねむ」さんの抗議を受け、現在では取り下げられている。
バーチャル美少女ねむさんは、抗議について「私のインタビューと共に掲載する約束を反故にされ、偏向した恣意的な取り上げ方だったため、情報提供者として取り下げ要請しました」とツイートしている。
また、「私共の調査レポートを根拠に書かれていますが、セクハラ経験は半数未満で、程度としても弱いものが多いですし、ユーザーも規制を望んでいません。思いやりは必要ですが『セクハラ横行』『対策急務』はさすがに煽りすぎかと思います」ともツイートしていた。
調査によってセクハラを含むハラスメントは実際に確認されたものの、調査側が「程度としては弱い」と認識していることや、この報道が仮想空間に対する何らかの「規制」につながることを懸念しているのだろう。
記事の是非は置くとして、一読したときに筆者が思い出したのは、2017年に報道された「女子高生に扮し『痴漢』をリアル体験 異色VR登場、開発者のねらいは…」(J-CASTニュース/2017年7月20日)だった。
これは、痴漢被害に遭う確率が低い男性が、その「被害」をバーチャルで体験するコンテンツ「事件再現VTRメーカー(通称「痴漢VR」)」を紹介する記事で、実際にコンテンツを体験した男性の多くが「痴漢に体を触られる嫌悪感や不快感は新感覚だった」と驚いていたと書かれている。
性被害の中でも痴漢や「セクハラ」はその被害を軽視されがちで、中には「美人から痴漢されるのなら自分だったらうれしいかもしれない」と言う男性もいるほど。しかし、実際に見知らぬ人から急に体を触られるのは恐怖に近い体験であることを、バーチャルで知るのは貴重な体験だっただろう。
メタバース空間でのハラスメントについて、女性型アバターでプレーしていたためと答えている人が半数いたという結果からは、男性ユーザーが女性型アバターでプレーして初めて気づく「女性視点でのセクハラ被害」もあっただろうと推測される。