中国政府はこれまで半導体やバイオテクノロジーの開発に莫大な予算をつけたが、半導体においては先端半導体の内製化にはことごとく失敗しており、バイオにおいても新型コロナウイルスのワクチン競争でも大きな成果を出すことができず、現在までコロナ禍で苦しむ原因となっている。

 これは中国の技術開発に偏りがあり、その方向性が「売る技術の発展」というより、先述したように、自国の安全保障に関わる「国家の発想」に常に陥っているからである。

 たとえば、中国は監視カメラなどの監視技術に強みがあるが、それはウイグル人弾圧やゼロコロナで人民の行動の自由を奪う「治安維持」のために、中国政府が奨励した結果だろう。さらに、ミサイルや戦闘機、宇宙計画など、軍事目的の技術のみが異常発達している。

 この中国流イノベーションに対して、アメリカのバイデン政権は半導体の国内製造を促進するCHIPS法(CHIPS and Science Act)で対抗している。2022年10月に成立したCHIPS法は、中国のAIと量子コンピューターを狙い撃ちにして、先端半導体やアメリカ製の先端部品を禁輸にするものである。これが十全に機能すれば、AIと量子コンピューターについて「息の根を止められた」状態になり、中国のイノベーションにとってこれほどの脅威はない。

 中国のイノベーションは曲がり角に来ており、今後はさらに苦しい戦いを強いられることが予想される。

(評論家・翻訳家 白川 司)