制度を作る経営陣が事実を認識し
率先して行動する

おふたり

前野 旧来の年功序列型の日本の会社で、競争型にするとひずみが生じやすい。そこで御社ではHRBPなどさまざまなバックアッププランを用意し、10年間でよくここまでもってきたなと思います。老舗の御社はこれまで古い体質の会社だったのではないでしょうか。

有沢 そうですね、非常に日本的な会社でした。前回お話した、入社から16年たたないと課長になれないとか、他にも、Sが6ポイント、Aが5ポイント、Bが4ポイント、Cが2ポイントで、16ポイント取ると1つ上のポジションに行けるという「SABCD評価」もそうです。

 当社では総合職のことを「N職」と呼びますが、「N1」「N2」「N3」「N4」の4段階あり、「N1」から「N2」に上がるのが16ポイント、「N2」から「N3」に上がるのが16ポイントと、ゲームの課金のような感じになっていました。そうすると、上司はみんなBを付けるわけですよ。4ポイントを4年間取らせるために。

 ある日、現場でマネジャーと面談したとき、「この人はどう考えてもCだと思うけど」と聞くと、「有沢さん、Cを付けたら2ポイントですよ。去年がBで4ポイントだから、これから2年続けてAを5ポイントずつ取れば16ポイントになりますが、その人の次の上司がAを2年連続で付けてくれる保証がどこにありますか」と言い放ったのです。

おふたり

 そのとき私は、これは現場が悪いのではなく、こんな制度を作った経営陣が悪いと思いました。

 そのことを、さまざまなファクトを用いて経営陣に6カ月かけて説明してきました。会長、社長、副社長の三役の前でパワーポイントで説明する前に一言、「カゴメはスーパーオールドファッションドジャパニーズトラディショナルコンサーバティブカンパニーだ」と言いました(笑)。

 それでポイント制を全廃したのです。今はSABCD評価が関係あるのは、年間の賞与だけです。昇格・昇進は、内部のアセスメント、外部のアセスメント、小論文、テストがあり、さらに「N3」までは基本的に私と人事部長との面談、「N4」という主任クラスから課長に上がるときは社長、専務2人、私、本部長との面談で総合的に判断しています。

 つまり、オートマチカルに昇格・昇進しないようにしたわけです。たしかに厳しくなりましたが、社員みんなの納得感は出ます。

 経営陣が事実をきちんと認識する、それが私たちの大事な仕事です。そこで意識が変わり、経営陣が率先して開示などを行うようになる一つのきっかけとなります。