外から来た異端児の行動だけでなく
プロパーの意識の変化でも変革は可能

前野 有沢さんがそういうことをできたのは、やはりさまざまな会社でいろいろな経験をしてきたことが大きいのでしょうか。

有沢 そうですね。りそな銀行で銀行員だったとき、銀行が公的資金の注入を受けました。その際、私は総合企画部副部長 兼 人事部副部長という、半沢直樹的に言うと一番の悪役のポジションだったのです。

前野先生

 当時、JR東日本の副社長の細谷英二さんという方が、りそなホールディングスの会長として新しく来られたとき、「君が一番悪い」「全部直しなさい」と言れました。そのときにトップの決断というか重みのようなものを感じたのです。

 HOYAにいたときも、当時の社長から「全部任せるから、とにかくグローバルな人事制度にすべて変えなさい。そしてそれに基づいてグローバル戦略をすべて変えなさい」と厳しく言われました。

 AIU保険には2008年9月14日に入りましたが、その2日後の16日に親会社のAIGグループはアメリカで経営不振で米国政府の管理下に置かれました。そのときトップが変わることによって従業員の心理的安全性を担保しながら、逆に危機をチャンスとして何かを変える機会なのだと学びました。

 現在、私の心の中では、りそな銀行がリテールでは国内ナンバー1の銀行で、AIGグループは生まれ変わって世界ナンバー1の保険会社となり、HOYAはさらにグローバルで圧倒的に強い会社になったと思っています。私自身は大したことはできませんでしたが、そのお手伝いをする機会をいただいた。それが私にとって、カゴメでこうしたことができるというイメージにつながっています。

おふたり

前野 有沢さんのお話を聞いて、いろいろな会社の人が参考にしてくださればと思います。やはり内部で見ていると分からないことがあり、外から人が来て、外の目で見て改革するということは必須なのでしょうか。

有沢 ケースバイケースですが、当社の場合はプロパーが圧倒的に多かった。だから、どうしても外から来ると、異端児というわけではありませんが、いわゆるトリガーの一つとして、何かを変えるために動くことは必要だと思います。

 日本の会社は圧倒的にプロパーが多いため、人事の中で話を聞いていても、「プロパーの意識を変えたい」と思っている人も結構います。そういう人がトリガーになって、いろいろ変えていく。制度を変えるのが目的ではなく、前野先生がおっしゃったように、「ウェルビーイングの状態にどうやって持っていくか」。それが目的なのです。そこさえ外さなければ、私のような外から来た人でなくても、中の人でも十分に変革できると思います。