変わってきた世論、混乱いつまで続く?
ただ、中国各地の対応を見ると、南方以外の地域、つまり北方、東北、西北地域の動きが明らかに遅れている。経済先進地域との間に、意識と行動力の差が大きく出ているのだ。
「こうしたリスクのあることは南方の人間に先にやってもらえばいい。われわれ北方は落ち着いてから行動を起こしても遅くない」と風見鶏的視点を持つ人も相当いる。
一方、世論は変わってきた。誤った医療情報を意図的に発表し、世論をミスリードしていた一部の医学専門家の責任を追及する声も出ている。上海にロックダウンを強硬に押し付けた政府高官に対する批判も多い。
また、「コロナとの共存」を早くから提案した上海の復旦大学付属華山病院感染科の張文宏主任や「国際都市としての上海はロックダウンしてはいけない」と呼びかけた復旦大学上海医学院の呉凡副院長らがゼロコロナ政策支持派の激しい攻撃を受け、かなり長期間にわたって発言できなくなってしまった。ようやく最近、張主任の新しい発言は散見できるようになったが、呉副院長の声をまだあまり聞かない。「なぜ、良心的な発言を続けるこれらの専門家の意見にもっと謙虚に耳を傾けられないのか」と政府の対応のまずさを指摘する人も多い。
コロナ感染関連の情報が混乱している中で、自己防衛をしなくてはいけないと考えた一部の市民たちは、どうしたわけか、「黄桃」というフルーツ缶詰の買いだめに走った。この思考回路のおかしさに気づきながら、「黄桃缶詰を医療保険の適用対象に入れてもいいのでは」とからかって提案する人も出た。
中国語では、「桃」の発音が逃げるという漢字の「逃」と同じなので、コロナ感染から逃げたいという市民のわらにもすがりたい気持ちが伝わってくる。この騒ぎがいつまで続くのかを示す中国全土感染状況地図というものも、インターネットに出回っている。
ゼロコロナ政策の軌道修正による初期の混乱は、来年1月中旬まで続くと予測されている。せめて中国国民が、落ち着いて旧正月を送れるようになってもらいたい。
(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)