日本経済への遺言#1Photo by Kazutoshi Sumitomo

2022年、日本をけん引してきた各界の大物が相次いで鬼籍に入った。「週刊ダイヤモンド」で過去に掲載した大物7人の生前のインタビューを基に、彼らが日本の政治・経済に遺したメッセージを紹介する。特集『日本経済への遺言』(全8回)の#1では、京セラやKDDIを創業し、「経営の神様」といわれる稲盛和夫氏の10年前のインタビューを再掲する。日本航空をV字回復させた稲盛氏は、日本企業が抱える病弊を喝破。欧米流の成果主義を見切り、日本企業の復活のために「現場力」を取り戻すべきだと断じた。(ダイヤモンド編集部)

「週刊ダイヤモンド」2012年12月22日号のインタビューを基に再編集。肩書や数値などの情報は雑誌掲載時のもの

日本企業の「現場力」失われた
JALで分かった競争力低下の原因

――なぜ日本経済、日本企業は競争力を失ってしまったのか。

 バブル経済崩壊後の20年の間に、日本企業の組織運営の在り方が大きく変容してしまったことが最大の原因なのではないか。

 かつては現場に権限が委譲されて仕事が任され、時々刻々と変わる市場の変化に迅速に対応できていた。ところが、バブル崩壊後に経済が停滞すると、本社が現場を信用しなくなり、権限を取り上げて一握りの本社の中枢だけで全てのことを決めて現場に命令するようになった。

 現場は「本社に言われた通りにやればいい」と考えるようになり、やる気がそがれた。「現場力」が失われてしまったのだ。これが電機メーカーをはじめ、日本企業が現在陥っている苦境なのではないかと思う。

――組織運営の在り方に競争力低下の原因があると。

 2010年に日本航空(JAL)に来てみて、それがはっきり分かった。

次ページでは、稲盛和夫氏がJAL再建の過程で、日本企業が抱える病弊をわずか1年でどう克服し、大改革を成し遂げたかを実例を挙げながら解説する。稲盛氏は日本企業にとって「米国型の成果主義はなじまない」と断じ、日本企業のあるべき組織運営の在り方を提示する。