大衆迎合的な増税ではなく
「消費増税」も重要な選択肢だ
法人税を上げれば、「大企業が内部留保をため込む一方で、従業員の賃上げには消極的だ」という不満解消につながる。
所得増税も、格差の拡大に対する国民の不満を和らげることになる。
たばこ税の増税は、喫煙者の反発を族議員が嫌がるものの、世界的な禁煙運動の広がりによって国民に納得されやすい。
要するに、いずれも国民の批判を避けやすい税目だ。
だが、これら3種類よりも確実かつ安定的に、税収が得られる税目がある。それは「消費税」だ。
国民の全世代が負担する消費税は、景気の動向に関係なく、毎年安定した税収が得られる。国民が節税対策を講じることも不可能だ。新型コロナウイルス感染拡大の落ち着きによって訪日外国人が増えれば、彼らが観光や買い物によって支払う消費税も増える。
にもかかわらず、岸田首相は現時点で、防衛増税の財源に消費税を含めていない。国民の不満を呼ぶ「消費増税」の議論から目を背けているのではないか。
歴史的に見ると、確かに消費税の導入や増税について、国民の理解を得るのは簡単ではない。
大平正芳、竹下登、細川護熙、橋本龍太郎、菅直人、野田佳彦と、少なくとも6つの内閣が、消費税を一因として退陣に追い込まれた。政治家が逃げたくなる気持ちはわかる(本連載第30回など)。
それでも、岸田首相が防衛増税の必要性を真剣に考えるならば、財源としての消費増税を重要な候補として検討すべきではないか。
仮に消費増税が国民に不人気でも、粘り強く言葉を尽くして説得を続けるだけの価値はあるように思える。
とはいえ、足元の各種世論調査では、すでに岸田内閣の支持率が低迷している。「不支持」を決めた国民の中には、防衛増税に反対している層や、旧統一教会を巡る問題への対応に不信感を持った層もいるだろう。
だが、それだけではなく、安全保障という国家の最重要課題に対して、大衆迎合的な姿勢で逃げ回る岸田内閣や自民党の姿勢に嫌気が差した国民もいるはずだ。
にもかかわらず、岸田首相が消費増税に向き合い、国民を説得しようとしない背景には、「国民への不信感」があるように思えてならない。