円の暴落とハイパーインフレは「2023年中にも来る」と藤巻健史氏が断言する理由

元モルガン銀行(現JPモルガン・チェース)日本代表・東京支店長であり、金融マーケットをよく知る藤巻健史氏は、ハイパーインフレ、円暴落の日は「2023年中にも来る」と明言する。その引き金を引くのは、これまで異次元緩和を続け、国債発行残高の過半を保有する日本銀行だ。特集『「お金」大全』(全17回)の#1では、藤巻氏に「目の前にある」とする危機の構図を語ってもらった。(構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

財政破綻を先延ばしにした
日本銀行の異次元緩和

――以前は、日本の財政破綻は近いと言っていましたね。

 私は2013年まではそう言っていましたが、黒田東彦・日本銀行総裁が異次元緩和を始めたことで財政破綻を先延ばしにしてしまいました。

 日銀が国債を購入して紙幣を刷れば、財政資金を賄えますから財政は破綻しません。やるとは思っていなかった国債の大量購入を始めてからは、財政破綻すると言っていません。

 財政破綻はしませんが、その代わり、日銀の信用が失われ、紙幣の価値、円の価値が失われます。円の価値が失われて暴落すれば、輸入品の価格上昇を通じて、ハイパーインフレが起きてしまいます。

 財政が悪化した状態で、歳出を賄うには二つの方法があります。一つが増税です。二つ目が今言った、紙幣を刷ることです。政治家は増税を嫌がりますから、紙幣を刷りたがります。

 しかし、後者はお金の価値をおとしめることになります。ですから、世界中の国で、政府とは別の中央銀行に紙幣を刷る機能を持たせ、国債を中央銀行が購入すること、いわゆる財政ファイナンスを禁止しているわけです。日本も財政法第5条で、日銀が政府から直接国債を購入することを禁止しています。

 現在、日銀は市場から国債を購入しています。しかし、発行額の半分以上を保有し、国債の入札日当日に購入したりしている状況は、国債を直接引き受けているのと実質的に変わりません。事実上、禁止されている財政ファイナンスをしているのです。

――日銀が財政ファイナンスに踏み込んだことで、危機の火種が政府から日銀に移ったということですか。