優秀な外国人労働者が
日本を避けるようになる
そして3番目に重要な変化は、日本企業で働く外国人労働者はこれまでの高偏差値から中偏差値へと水準が低下していくということです。日本で働くうまみがこの先、外国人労働者にとってはますます低くなっていくのです。
これまで日本人があまり意識していなかったことですが、日本で働く外国人労働者はもともと非常に偏差値が高い人たちが多数派を占めていました。大学の偏差値で言うと60台の優秀な人たちが日本語を習得し、コンビニでアルバイトをして日本の生活を学んでいるのです。
これは実はその国の人口の成績上位16%にあたる優秀な人たちです。コンビニで働く外国人店員の正体は、とんでもなく優秀な人材だったりしたわけです。
ところが昨今の円安と、アジア周辺国の相対的な成長によって日本で働くということの意味がだんだん薄れてきています。その結果、企業にとっては「外国人だから安く雇えるうえに実はめちゃくちゃ優秀だ」という人材は今後、手に入らない「人財」になっていくのです。
そのことで「不足する人材は外国人で補完しよう」という人事政策が成立しなくなります。結局のところ待遇の悪い会社は、日本人も外国人も雇えない未来がすぐそこまで来ているのです。
これから先の10年間で起きることを、改めてまとめてみましょう。少子高齢化によって働き盛りの人口が15%減少することで、若い人材が希少人財となっていきます。同時に日本の地位が下がることで優秀な外国人労働者も採れない時代がやってきます。
一方で、企業が成長するための人財への投資の重要性が増します。結果として起きることは、若くて優秀な人財の奪い合いが始まるのです。
その文脈で考えてみたときに、経済団体のトップ企業の中でこの春の賃上げ幅をなんとか5%にするかどうかで悩んでいる企業と、この春、従業員の賃上げ幅を15%にすることを決めた会社とでは未来が分かれ始めている。ファーストリテイリングの賃上げのニュースはこのように、大企業間の競争が静かに始まっていると見るべきニュースだったのです。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)