安眠をかなえる「スリープテック」
市場拡大余地に期待
厚生労働省が20年10月に発表した「国民健康・栄養調査」によると、男女ともに5人に1人以上が「睡眠全体の質に満足できていなかった」と回答した。また「日中、眠気を感じた」人は男性が約32%、女性はさらに多い約37%に上った。総務省が行った16年の「社会生活基本調査」でも日本人の睡眠時間は減少傾向にあることが明らかになっており、その睡眠時間は世界最低だという。
こうした背景もあり、テクノロジーで睡眠の質を改善する「スリープテック」が注目され、参入企業も増加している。08年のリーマンショック後の巣ごもり消費では、肌触りに特徴のあるオシャレなルームウエアが各社から登場した。
今回のコロナ禍による巣ごもり消費で良質な睡眠を求める人が増えたことを受けて、イオングループのコックスは森林や植物の香りで癒やしてくれるパジャマを商品化し、安眠ライフブランド「Sleeping.com(スリーピングドットコム)」として売り出した。
また、東レグループのアルタモーダはヒアルロン酸とコラーゲンを配合した生地を使用したパジャマ「おやすみケアウェア」を発売。保湿性に優れ、乾燥している季節でもしっとりと潤いを保つスキンケア衣類で、気持ちよく睡眠できるという。新しい価値や機能を付加して、着て豊かになる「リッチ・パジャマ」の動きも出始めたのだ。
パジャマメーカーにとっての第2次変革期に突入したといえるが、石黒社長は「そもそもリカバリーウエアという言葉を知らない人は少なくない。世の中の知名度は1割もないと思う」と指摘する。
言い換えれば市場拡大余地は大きく、潜在顧客は少なくないわけだ。そこをどう取り込むかが市場を押さえるポイントになるが、石黒社長は「われわれは天然繊維とパジャマを強みに販売し、知名度を上げていく。それが売り上げにつながる一番の方法だ」と戦略を語った。「ただPRにお金をかけられない」と笑う。