経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
「相続税は最後の砦」
【前回】からの続き つまり、税負担を逃れた結果として多額の財産を築いた富裕層が現実にいるわけです。ここで重要になるのが、相続税調査なのです。私が税務職員になったとき、先輩職員から「相続税は最後の砦」といわれました。これは相続税調査を担う職員の間で、伝統的に引き継がれている言葉です。
人生には常に納税がつきまといますが、相続税が最後の機会になります。もしこの機会にとるべき税金をとらなければ、もはや税金を回収するチャンスは失われてしまいます。このような背景があるからこそ、相続税調査をする国税職員は徹底的に過去のお金の流れを含めて調査するのです。
国税の“仏と鬼の顔”
国税職員には2つの立場があります。1つは行政サービスを提供する立場、もう1つは“税金逃れ”の脱法者たちを取り締まる立場です。いわば、仏と鬼の顔を使い分けているのです。私は、自分でいうのもなんですが、性格は温厚なほうで、税務署ではクレームを穏便におさめるような役回りをすることがありました。
でも、税務調査の場面で嘘をつかれたり、脱税を発見したりすると、やはり厳しく対応せざるを得ません。そういうときは、相手の言葉の矛盾を指摘し、真実を話してもらうまで粘り強く説得することになります。
国税が“鬼の顔”を見せるとき
法律にのっとって税金を減らす「節税」と、違法に税金を減らす「脱税」は、言葉は似ていますが、まったく意味が違います。脱税と判断されて国税職員から厳しい追及を受けるのは、シンプルにいうと「嘘をついたとき」です。
財産があると知りながら意図的に隠したり、税務調査のときに偽りの発言をしたりすれば、国税職員はけっして見逃しません。脱税が発覚すれば、金銭的なダメージを受けるのは当然ですが、取引先や取引銀行などが調査をされることも多く、社会的信用も失いかねません。安易に脱税に走るのではなく、正しい知識を身につけて節税にとり組みましょう。【次回に続く】
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。