新型コロナウイルス発生後の軽減措置についての詳細は、22年2月ダイヤモンド・オンライン記事『今期も苦戦の「JALとANA」、コロナ後に向けた行政支援の在り方とは』および、21年1月ダイヤモンド・オンライン記事『苦境の「JALとANA」、行政はどう支援すればいいか』にまとめられているが、以下、簡単に振り返ってみよう。
20年1月ごろ新型コロナウイルスが世界的に広がり、この影響により航空需要が大幅に低下したことから、21年度には、航空機燃料税は、コロナ前水準の航空機燃料1キロリットル当たり1万8000円が9000円へと半減する軽減措置が取られた。
22年度は、ワクチン接種が進み、国内線での需要は回復しつつあるとの判断から、軽減の見直しが検討されたものの、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン株」の発出もあり、航空機燃料税の軽減は、縮小される形で継続されることとなった(1万3000円水準)。
この経緯を踏まえて、23年度および24年度以降の軽減方針策定の背景を考えてみよう。すでに述べたように、世界での国際線旅客数はほぼコロナ前水準に戻りつつある一方で、日本の国際線旅客数(本邦航空会社10社)は、いまだ50%にすぎない状態にあり、この国際線旅客数がいつコロナ前水準に戻るのかが焦点となったと思われる(交渉の時点では、上記で述べた5類への移行のスケジュールは示されていなかったことにも注意が必要である)。
結果としては、23年度の必要な支援規模は約500億円であるとの判断がなされ、22年度の700億円からは、縮小されることとなった。その縮小分(200億円)は、空港使用料の軽減(国内線に係る着陸料、停留料、航行援助施設利用料)によるものであり、航空機燃料税の軽減額は、据え置きとなり、この軽減額に応じた税率として22年度同様1万3000円が設定されたわけである。
さらに、その後の軽減の方向性が示され、軽減措置の出口が示された。これは、これまでの措置が毎年の見直しであり将来が見えなかった点を考慮すれば、画期的なことである。
毎年の変更はその時の状況に応じて交渉ができるという利点はあるものの、将来についての航空機燃料税の水準が見通せないという難点もあった。コロナとの共生が進みつつある航空業界においても、航空機燃料税の軽減を継続して要望し続ける根拠は減ってきており、出口を決めておくことは、航空戦略を練る上でも望ましいとの判断ができてきたのだと思われる。
その結果として定まった航空機燃料税の水準の今後のスケジュールは、以下の図にまとめられた通りである。
https://www.mlit.go.jp/page/content/001580226.pdf 拡大画像表示
具体的には、23年度から24年度の間は、22年度水準を据え置き、25年度から26年度は、1万5000円水準に引き上げ、27年度に、コロナ前水準である1万8000円に戻すという5年間のスケジュールが示された。
国際線旅客数がコロナ前水準に戻るのがいつになるのかは見えないものの、回復基調にあることは世界の旅客数から見ても明らかであり、22年度水準の継続をずっと維持することは難しい。いつ引き上げるのかが焦点となるが、少しの余裕は欲しい航空会社にとってもこの2年間の猶予期間をおいての引き上げは、納得のいくものとなったと思われる。
5年間の航空機燃料税の水準が確定したことで、航空会社にとっても、その水準に合わせた戦略を練ることが可能となる。政府からの軽減支援や、5月以降の水際対策の撤廃を受けて、本邦(国内)航空会社は確実な収支改善努力を行い、その結果、コロナ前水準の旅客数が回復することに期待したい。これは、軽減が効果的であったという説明責任が果たされるということにもなろう。