第1条から早速問題だらけ
まず、本法案は、「令和五年度以降における我が国の防衛力の抜本的な強化及び抜本的に強化された防衛力の安定的な維持に必要な財源を確保するための特別措置」を講ずることを目的として、令和5年度以降の各年度の防衛力整備計画対象経費のうち、令和4年度当初予算に計上された防衛力整備計画対象経費の額を上回る部分について、(1)財政投融資特別会計財政融資資金勘定および外国為替資金特別会計からの一般会計への繰入金、(2)独立行政法人国立病院機構および独立行政法人地域医療機能推進機構の国庫納付金、(3)国有財産の処分による収入その他の租税収入以外の収入(「防衛力強化税外収入」)を充当し、(4)必要な経費をプールするための防衛力強化資金を設けるために立案されたものである。
しかし、第1条から問題がある。以下条文を追って解説していく。
その第1条、第3項において防衛力整備計画対象経費の定義が規定されているのだが、我が国の防衛力の強化のための防衛費増額のはずなのに、在日米軍関係経費や沖縄の米軍基地等再編経費までその対象に含まれている。これは極めておかしな話であり、それらの経費は別物として切り分けて処理すべきはずである。予算を増やしたくない、できれば減らしたいと考える財務省がシレッと潜り込ませたのだろう。
第2条および第3条は先に挙げた特別会計からの繰り入れについて規定しているが、これはそれに続く第4条および第5条の独法の積立金の一部の国庫納付についての規定との比較で解説するが、前者は「一般会計の歳入に繰り入れることができる」とされているのに対し、後者は「納付しなければならない」とされている。
つまり、特別会計からの繰り入れはやらないことも可能であるが、後者は絶対にやらなければならないこととされている、ということである。これは以前から財務省が独立行政法人の積立金や基金を「無駄」と難癖をつけて返納させようともくろんでいたところ、防衛費増額を大義名分として穴を空けようという魂胆に見える。その先に懸念されるのは、独立行政法人の積立金等の国庫返納の対象の拡大である。そうなれば多くの独法が政策的機能を十全に果たせなくなってしまいかねない。
そもそも、なぜこれら二つの独法がこの段階で対象になっているのかも不可思議である。おそらく、これら独法の新型コロナ対応の予算が余っていたことが明らかになり、批判の的となったことがあったところ、格好の人身御供とされたといったところだろう。両独法ともいざというときの対応のために存在するわけであり、今回のようなパンデミックが再び起きたときに、予算がないので、予算がなかったから準備ができなかったので対応できないでは済まされない。そうした事態に陥らないように普段から十分な予算を配分して体制を整えておくべきところ、単年度思考、短期思考の財務省がそうさせないようにしているとしか言いようがない。